刑法(横領罪)

横領罪(17) ~「集金者や債権の取立てを委任された者が、取り立てた金銭を領得した場合、横領罪が成立する」を判例で解説~

集金者が、取り立てた金銭を領得した場合、横領罪が成立する

 集金者が、自己が取り立てた金銭を領得した場合は、横領罪が成立します。

 この点について、以下の判例があります。

大審院判決(大正11年1月17日)

 商業使用人が、主人のために売掛代金の取立てをしたときは、その金銭の所有権は主人に帰属するので、使用人が、その売掛代金の保管中に、主人の許諾を得ずに、ほしいままに自己の用途に費消したときには横領罪を構成するとしました。

東京高裁判決(昭和28年6月12日)

 集金業務に従事していた会社の外務員が、自己の用途に費消する意図を秘して集金をした事案で、裁判官は、

  • それは正当権限に基づく集金行為であり、当該外務員に対する支払行為は、会社に対して有効な支払となるのであって、外務員による集金の際に、受領金の使途に不法の意図があったとしても、単に動機の不法にすぎないもので、集金行為を違法ならしめるのではない
  • 集金した金員を費消ないし着服したときに、業務上横領罪が成立するのは格別、その集金行為が詐欺に当たるということはできない

として、詐欺罪を認定した一審判決を破棄し、業務上横領罪が成立するとしました。

債権の取立てを委任された者が、取り立てた金銭を領得した場合、横領罪が成立する

 債権の取立てを委任された者が、取り立てた金銭を領得した場合、横領罪が成立します。

 この点について、以下の判例があります。

大審院判決(昭和8年9月11日)

 債権の取立てを委任された者が取り立てた金銭は、特段の事情がない限りは、そのまま債権者の所有となり、これを領得することは横領罪に当たるとしました。

大審院判決(昭和8年10月6日)

 他人の委託により取り立てた賃料も、これを受領すると同時に委託者のために保管すべき性質を有し、その賃料の所有権は、賃料取立ての委託者に属することになるので、賃料取立人が賃料を領得した場合は、横領罪になるとしました。

福岡高裁判決(昭和28年3月13日)

 金銭取立ての委任者(債権者)と金銭取立て人との間で、取立て又は引渡しの期限を定めなかったとしても、取り立てた金銭の所有権は債権者に帰属するとされ、金銭取立て人が、その金銭を領得すれば、横領罪になるとしました。

東京高裁判決(昭和32年7月20日)

 債権者から金銭取立ての委任を受けたうちの一部の取立てをした段階の事案において、金銭の所有権は債権者に帰属するとされ、金銭取立て人が、その金銭を領得すれば、横領罪になるとしました。

大審院判決(大正8年6月20日)、大審院判決(昭和9年4月23日)

 自らの名前で取立てを行うため、債権の信託的譲渡を受け、信託者(債権者)のために自己の名をもって取り立てた金員は、信託者の所有となるとし、取立人が、その取り立てた金員を領得すれば、横領罪になるとしました。

東京高検判決(昭和59年11月6日)

 この判例は、

  • 手形債権の取立てを委託された者が取り立てた金銭は、直ちに委託者たる手形債権者の所有に帰属する
  • 決済された手形金が、受託者の預金口座に振込入金された場合は、受託者において、受託者の預金口座中に、その手形金相当の金額を委託者のため預かり保管しているものと認められる
  • よって、手形債権の取立てを委託された者が、自己の管理する口座に振り込まれた手形金相当の金額を自己の債務返済のために払い戻すことは横領に当たる

としました。

大阪高裁判決(昭和29年2月23日)

 債権者から債権の取立てを委任された者が、債務者から、債務弁済に充当するため債務者所有の物品の換価処分を依頼され、これを換価した代金を預かり保管した場合には、換価と同時にその金銭が債権者の所有となるか、債権者に交付されるまでは債務者の所有となるかは契約の内容によるにしても、債権者又は債務者のいずれにも交付しない意思で自己のために費消したときには、横領罪が成立するとしました。

名古屋高裁判決(昭和26年2月4日)

 郵便貯金通帳を窃取した者から委託を受け、その通帳を利用して金員の払戻しを受けた者が、その金員を自己の用途に費消した場合には、郵便貯金通帳を窃取した者との関係において、横領罪が成立するとしました。

次の記事

横領罪(1)~(65)の記事まとめ一覧

 横領罪(1)~(65)の記事まとめ一覧