前回の記事の続きです。
公共危険罪
放火の罪・失火の罪(刑法9章の罪)は、
火力によって建造物その他の物件を焼損することを内容とする犯罪
です。
火災は、その性質上、単に個人の財産を侵害するだけでなく、公衆の生命・身体・財産に不測の損害を与え、公衆の不安感、危惧感を生ぜしめることから、放火の罪・失火の罪(刑法9章の罪)は、
公共危険罪
と呼ばれます。
公共危険罪は、
不特定多数の人の生命・身体・財産を危険にさらす罪
をいいます。
公共危険罪は、
- 抽象的公共危険罪
- 具体的公共危険罪
とに分けられます。
抽象的公共危険罪と具体的公共危険罪
放火の罪・失火の罪(刑法9章の罪)において、抽象的危険罪と具体的危険罪を区別する基準は、
構成要件上、危険の発生が明示されているか否か
という形式的な観点からの区別します。
具体的公共危険罪
放火の罪・失火の罪(刑法9章の罪)において、具体的公共危険罪は、
公共の危険が特に犯罪の構成要件として規定されている犯罪(条文に「公共の危険」という文言が記載れている犯罪)
と捉えればよいです。
放火の罪・失火の罪(刑法9章の罪)では、
- 犯人の自己所有物件に対する非現住建造物等放火罪(刑法109条2項)
- 建造物等以外放火罪(刑法110条)
- 犯人の自己所有物件に対する失火罪(刑法116条2項)
- 犯人の自己所有物件に対する激発物破裂(刑法117条1項後段)
- ガス漏出罪(刑法118条1項)
の罪が具体的公共危険罪に該当します。
抽象的公共危険罪
放火の罪・失火の罪(刑法9章の罪)において、抽象的公共危険罪は、
条文上、公共の危険の発生は明記されておらず、構成要件に当たる事実があれば当然に抽象的な公共の危険があるものと擬制される犯罪(条文に「公共の危険」という文言が記載れていない犯罪)
と捉えればよいです。
放火の罪・失火の罪(刑法9章の罪)では、
- 現住建造物等放火罪(刑法108条)
- 非現住建造物等放火罪(刑法109条1項)
- 失火罪(刑法116条1項)
- 激発物破裂罪(刑法117条1項前段)
の罪が抽象的公共危険罪に該当します。
次回の記事に続く
次回の記事では、
不作為による放火罪の成立要件
を説明します。