接見交通権とは?

 逮捕・勾留されている被疑者・被告人は、

身体を拘束されている留置施設の接見室などで、弁護人や家族・知人と面会し、書類や物を受け取る権利

を持っています。

 この権利を

接見交通権

といいます。

 接見交通権は、

  1. 弁護人と接見する場合(刑訴法39条1項憲法34条
  2. 弁護人以外の者と接見する場合(刑訴法80条207条1項

とで、接見のルールが異なります。

 接見交通権を理解するに当たり、「弁護人と接見する場合」と「弁護人以外の者と接見する場合」の2つのパターンに分けて考えることが大切です。

① 弁護人と接見する場合

弁護人との接見交通権の根拠法令

 刑訴法39条1項は、

『身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる』

と規定しています。

 『身体の拘束を受けている被告人又は被疑者』とは、逮捕・勾留されている被告人・被疑者のことをいいます。

 『弁護人となろうとする者』とは、被告人・被疑者に会った上で弁護人の仕事を受けるかどうかを決めようと考えている弁護人のことをいいます。

被告人・被疑者と弁護人が接見することを妨げてはならない

 弁護人との接見交通権は、刑訴法39条1項により、逮捕・勾留中の被告人・被疑者に保障された権利です。

 なので、捜査機関が、逮捕・勾留中の被告人・被疑者と弁護人が接見することを妨げることはできません。

 もし、弁護人から、捜査機関に対し、被告人・被疑者と接見したいという申し入れがあった場合は、捜査機関は接見をさせなければなりません。

 被告人・被疑者から、捜査機関に対し、弁護人と接見したいという申し入れがあった場合も同様に、捜査機関は接見をさせなければなりません。

捜査機関は、被疑者に対しては、接見の日時・場所・時間を指定できる

 捜査機関は、逮捕・勾留中の被告人・被疑者と弁護人が接見することを妨げることができませんが、

捜査のために必要があるときは、被疑者に対しては、接見の日時・場所・時間を指定

できます(刑訴法39条3項)。

被告人に対しては、接見の日時・場所・時間を指定できない

 ポイントは、『被疑者に対して接見の日時・場所・時間を指定できる』という点にあります。

 これが意味することは、

被告人に対しては、接見の日時・場所・時間を指定できない

ということです。

 理由は、被告人は、すでに事件を起訴され、捜査が終わっている立場にある者だからです。

 すでに捜査が終わっているの、捜査機関は、捜査のための必要を理由として、接見の日時・場所・時間を指定し得ないのです。

また、被告人に余罪があり、この余罪について、被告人が被疑者として逮捕・勾留されていなのであれば、捜査機関は、この余罪に関する弁護人との接見について、接見の日時・場所・時間の指定はできません。

 この点については、最高裁判例(昭和41年7月26日)があり、裁判官は、

  • 公訴の提起後は、余罪について捜査の必要がある場合であって、検察官等は、被告事件の弁護人または弁護人となろうとする者に対し、刑訴法39条3項の指定権を行使しえない

と判示しています。

 もし、捜査機関が、捜査中の余罪について、接見日時等の指定をしたければ、被告人を余罪事件で逮捕・勾留する必要があります。

被告人であっても、逮捕・勾留中の被疑者の立場もあれば、接見の日時・場所・時間の指定ができる

 被告人に対しては、弁護人との接見日時等の指定はできず、捜査機関は、いつでも被告人と弁護人とを接見させなければなりません。

 しかし、この時、被告人が、

別件の余罪で逮捕・勾留され、逮捕・勾留中の被疑者という立場も合わせ持っている場合

は、捜査機関は、接見の日時・場所・時間を指定することができます。

 この点については、最高裁判例(昭和55年4月28日)があり、裁判官は、

  • 同一人につき被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留とが競合している場合、検察官等は、被告事件について防御権の不当な制限にわたらない限り、刑訴法39条3項の接見等の指定権を行使することができる

と判示しています。

刑訴法39条3項の『捜査のために必要があるとき』とは?

 刑訴法39条3項の『捜査のために必要があるとき』とは、

捜査の中断による支障が生じる場合

をいいます。

 具体的には、

  • 被疑者の取調べ中である
  • まさにこれから被疑者の取調べを行うところである
  • 被疑者を実況見分や検証に立ち会わせている

といった場合です。

 これらの状況で弁護人との接見を認めると、捜査に支障が生じます。

 このような場合に、捜査機関は、接見の日時・場所・時間を指定できます。

 参考となる以下の判例があります。

最高裁判決(平成11年3月24日)

 裁判所は、

  • 刑訴法39条は、前記のように一項において接見交通権を規定する一方、3項本文において、「検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。」と規定し、接見交通権の行使につき捜査機関が制限を加えることを認めている。この規定は、刑訴法において身体の拘束を受けている被疑者を取り調べることが認められていること(198条1項)、被疑者の身体の拘束については刑訴法上最大でも23日間(内乱罪等に当たる事件については28日間)という厳格な時間的制約があること(203条から205条まで、208条208条の2参照)などにかんがみ、被疑者の取調べ等の捜査の必要と接見交通権の行使との調整を図る趣旨で置かれたものである
  • そして、刑訴法39条3項ただし書は、「但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。」と規定し、捜査機関のする右の接見等の日時等の指定は飽くまで必要やむを得ない例外的措置であって、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限することは許されない旨を明らかにしている
  • 刑訴法39条の立法趣旨、内容に照らすと、捜査機関は、弁護人等から被疑者との接見等の申出があったときは、原則としていつでも接見等の機会を与えなければならないのであり、同条3項本文にいう「捜査のため必要があるとき」とは、右接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られ、右要件が具備され、接見等の日時等の指定をする場合には、捜査機関は、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならないものと解すべきである
  • そして、弁護人等から接見等の申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として右にいう取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たると解すべきである

と判示しました。

最高裁判決(平成12年6月13日)

 逮捕された被疑者の弁護人との初回接見に関する接見指定に関する事例です。

 裁判所は、

  • 弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者から被疑者の逮捕直後に初回の接見の申出を受けた捜査機関は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、被疑者の引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く指紋採取、写真撮影等所要の手続を終えた後、たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認める措置を採るべきである
  • 接見の日時等の指定をする権限を有する司法警察職員が、逮捕された被疑者の依頼により弁護人となろうとする者として逮捕直後に警察署に赴いた弁護士から初回の接見の申出を受けたのに対し、接見申出があってから約1時間10分が経過した時点に至って、警察署前に待機していた弁護士に対して接見の日時を翌日に指定した措置は、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能であるにもかかわらず、犯罪事実の要旨の告知等引致後直ちに行うべきものとされている手続及びそれに引き続く写真撮影等所要の手続が終了した後も弁護士と協議することなく取調べを継続し、その後被疑者の夕食のために取調べが中断されたのに、夕食前の取調べの終了を早めたり、夕食後の取調べの開始を遅らせたりして接見させることをしなかったなど判示の事情の下においては、国家賠償法1条項にいう違法な行為に当たる

と判示しました。

刑訴法39条1項の『立会人なくして接見』とは? (秘密交通権)

 刑訴法39条1項にある「立会人なくして接見」とは、弁護人が、被疑者・被告人と、警察署留置施設職員などの立会人なしで接見できるということです。

 これは、

弁護人と被疑者・被告人の会話内容は誰にも知られないことができる

ということを意味します。

 この弁護人と被疑者・被告人の会話内容は誰にも知られないことができる権利を

秘密交通権

といいます。

 弁護人と被疑者・被告人は、秘密交通権があるため、捜査機関である警察官や検察官が、弁護人、被疑者・被告人の意に反して、その会話内容を知ることは、違法行為になります。

接見の日時・場所・時間が指定ができる者

 弁護人、被疑者・被告人に対し、接見の日時・場所・時間の指定ができる者は、

です(刑訴法39条3項)。

捜査機関の接見の日時・場所・時間の指定に対する不服申立て(準抗告)

 弁護人、被告人・被疑者は、捜査機関がした接見の日時・場所・時間の指定に不満がある場合は、裁判所に不服を申し立てることができます。

 この不服申立てを

準抗告

と呼びます。

 弁護人、被告人・被疑者は、準抗告を行い、捜査機関が行った接見の日時・場所・時間の指定の取消しや変更を求めることができます(刑訴法430条)。

 たとえば、被告人に対しては、接見の日時・場所・時間の指定はできないはずなのに、捜査機関が接見日時等の指定をしてきた場合は、弁護人、被告人・被疑者は、準抗告を行うことになります。

 この点については、先ほどの最高裁判例(昭和41年7月26日)において、裁判官は、

  • 公訴の提起後は、余罪について捜査の必要がある場合であっても、検察官等は、被告事件の弁護人または弁護人となろうとする者に対し、刑訴法39条3項の指定権を行使しえないものと解すべきであり、検察官等がそのような権限があるものと誤解して、同条1項の接見等を拒否した場合、その処分に不服がある者は、同430条により準抗告を申し立てうるものと解するのを相当とする

と判示しています。

弁護人以外の者と接見する場合

 次に、逮捕・勾留されている被告人・被疑者の弁護人との接見について説明してきました。

 これから、逮捕・勾留されている被告人・被疑者の

弁護人以外の者

との接見について説明してきます。

 弁護人以外の者とは、たとえば、

被告人・被疑者の家族、友人、知人

など、あらゆる人を指します。

 逮捕・勾留されている被告人・被疑者は、これら弁護人以外の者と面会し、書面や物を受け取る権利を有します(刑訴法80条207条1項)。

 ここでのポイントは、弁護人以外の者との接見のルールは、弁護人との接見のルールとは、異なるルールが適用されるということです。

 具体的な内容について、以下で説明していきます。

弁護人以外の者との接見の場合には、留置施設職員の立会が必要になる

 弁護人との接見の場合、警察署の留置施設職員は、接見の場に立ち会うことは禁止されます(秘密交通権)(刑訴法39条1項)。

 これとは逆に、弁護人以外の者との接見の場合は、警察署の留置施設職員は、接見の場に立ち会うことになっています(刑事収容施設法116条1項218条1項)。

逮捕中の状態の被疑者に、弁護人以外の者との接見交通権はない

 弁護人との接見の場合は、逮捕中でも、勾留中でも、被疑者は弁護人と接見することができます。

 これに対し、弁護人以外の者との接見の場合は、逮捕中の状態にある被疑者は、弁護人以外の者と接見する権利はありません。

 たとえば、逮捕された直後の被疑者が、「親に合わせてくれ!」と警察に依頼しても、逮捕中の被疑者には弁護人以外の者と接見する権利はないので、警察がその依頼に応えなかったとしても問題はありません。

 この理由は、逮捕中においては、被疑者を逮捕してから48時間以内に検察庁に送致しなければならないなどの時間制限があるためです。

 このような時間制限がある事情から、逮捕された被疑者に関する準用規定を定めた刑訴法209条が、弁護人以外の者との接見交通権を定めた刑訴法80条を準用しない法の設計になっています。

【参考説明】逮捕・勾留の時間制限とは?

 法が設けている逮捕・勾留の時間制限は以下のとおりです。

  • 警察官が被疑者を逮捕した場合に、逮捕から48時間以内に被疑者を検察官に送らなければならない(刑訴法203条1項
  • 検察官が被疑者を逮捕した場合に、逮捕してから48時間以内に裁判官に勾留請求しなければならない(刑訴法204条1項
  • 先ほどの刑訴法203条1項の規定により、警察官から被疑者の送致を受けた検察官は、送致を受けてから24時間以内(かつ、警察官が被疑者を逮捕してから72時間以内)に裁判官に勾留請求しなければならない(刑訴法205条1・2項
  • 逮捕された被疑者は、検察官が裁判官に対して行った勾留請求が認められ、勾留状が発付されると、10日間、警察署の留置施設で勾留される(刑訴法208条1項
  • 勾留期間は、必要があれば、10日間延長できる(刑訴法208条2項
  • 勾留期間は、国を脅かす罪(内乱・外患・外交・騒乱に関する罪)については、さらに5日間延長できる(刑訴法208条の2

被疑者・被告人が弁護人以外の者と接見することを禁止できる(接見禁止)

 弁護人との接見の場合は、いかなる理由があろうと、被疑者・被告人が弁護人と接見することを禁止することはできません。

 これに対し、弁護人以外の者との接見の場合は、被疑者・被告人が弁護人以外の者と接見することを禁止することができます(刑訴法81条207条1項)。

 被疑者・被告人が弁護人以外の者との接見を禁止することを

接見禁止

といいます。

 接見禁止は、被疑者・被告人の接見交通権を侵害するものなので、接見禁止を行うには理由が必要になります。

 その理由とは、

逃亡または罪証隠滅のおそれ

です。

 被疑者・被告人が弁護人以外の者と接見することで、逃亡または罪証隠滅のおそれがある場合に、接見禁止は認められます。

 たとえば、逃亡または罪証隠滅のおそれとして、被疑者・被告人が、

  • 仲間と接見して、逃亡計画を立てる
  • 共犯者と接見して、共犯者に対し、自分の都合のよい供述をするように働きかける
  • 知人と接見し、知人に依頼して、犯罪被害者に被害届を取り下げるように働きかけてもらう
  • 家族と接見し、家に隠してある証拠物を捨てるように依頼する

といったことが考えられます。

 接見禁止の手続は、

  1. 検察官が、裁判官に対し、接見禁止を請求し、裁判官が検察官の請求に応じて、接見禁止を決定する
  2. 裁判官が職権で(検察官の請求なしに独自の判断で)接見禁止を決定する

の2パターンがあります(刑訴法81条207条1項)。

 なお、裁判官が接見禁止を決定するに当たり、食べ物を差し入れを禁止することはできません(刑訴法81条ただし書き)。

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