被害者参加制度とは?
被害者参加制度とは、
犯罪の被害者や遺族等が、裁判所の許可を受けた上で、「被害者参加人」として、検察官と一緒に公判に出席し、検察官のサポートの下、公判に参加する制度
をいいます(刑訴法316条の33~39)。
公判に参加するとは、被害者参加人自身が、
- 証人に対し質問する
- 被告人に対し質問をする
- 裁判官に対し意見を述べる(例えば、犯罪被害に遭い苦痛を味わった、被告人に厳罰を与えてほしいなどの意見を述べる)
などの検察官が行うような訴訟活動を被害者参加人も行うことを意味します。
被害者参加制度を利用できるのは、一定の犯罪に限られ、被害者参加するには裁判所の許可が必要です。
この点につき、以下で詳しく説明します。
被害者参加人(被害者参加制度を利用できる者)
被害者参加制度を利用できる者は、
- 犯罪の被害者本人
- 被害者の法定代理人(未成年者の両親など)
- 被害者本人が亡くなった場合や心身に重大な故障がある場合の被害者の配偶者、直系親族、兄弟姉妹
です。
なお、被害者参加制度を使用して公判に参加する者を「被害者参加人」といいます。
被害者参加制度の対象犯罪
被害者参加制度の対象犯罪は、
- 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(殺人罪、傷害罪、傷害致死罪など)
- 不同意わいせつ罪、不同意わいせつ致死傷罪(刑法176条)
- 不同意性交等罪、不同意性交等致死傷罪(刑法177条)
- 監護者わいせつ罪、監護者わいせつ致死傷罪(刑法179条1項)
- 監護者性交等罪、監護者性交等致死傷罪(刑法179条2項)
- 業務上過失致死傷罪(刑法211条)
- 逮捕罪、監禁罪(刑法220条)
- 未成年者略取罪、未成年者誘拐罪(刑法224条)
- 営利目的等略取罪、営利目的等誘拐(刑法225条)
- 身の代金目的略取等罪(刑法225条の2)
- 所在国外移送目的略取罪、所在国外移送目的誘拐罪(刑法226条)
- 人身売買罪(刑法226条の2)
- 被略取者等所在国外移送罪(刑法226条の3)
- 被略取者引渡し等罪(刑法227条)
- 犯罪行為に上記②~⑭の罪の犯罪行為を含む罪(上記①に掲げる罪は除く。)
- 上記①~⑮の罪の未遂罪
- 危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法2条、3条)
- 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(自動車運転死傷処罰法4条)
- 過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法5条)
- 無免許危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法6条1項・2項)
- 無免許過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(自動車運転死傷処罰法6条3項)
- 無免許過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法6条4項)
です。
被害者参加制度を利用する方法
被害者参加制度を利用する方法は、
- 被害者等による検察官への被害者参加したい旨の申出
- 検察官の被害者参加の申出があった旨の裁判所への通知
- 被害者参加を許可する旨の裁判所の決定
という流れによります。
① 被害者等による検察官への被害者参加したい旨の申出
被害者参加制度を利用するには、被害者参加したい旨をあらかじめ検察官に申し出る必要があります(刑訴法316条の33第2項前段)。
その申出ができるのは、
- 被害者
- 被害者の法定代理人
- 被害者本人が亡くなった場合や心身に重大な故障がある場合の被害者の配偶者、直系親族、兄弟姉妹
- ①~③の者から委託を受けた弁護士(この弁護士を「被害者参加弁護士」といいます)
です。
② 被害者参加の申出があったことの検察官の裁判所への通知
検察官は、被害者参加の申出を受けたら、意見(「被害者参加を認めるべき」などの意見)を付して、被害者参加の申出があった旨を裁判所に通知します(刑訴法316条の33第2項後段、刑訴法規則217の34)。
③ 被害者参加を許可する旨の裁判所の決定
検察官から、被害者参加の申出があった旨の通知を受けた裁判所は、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、被害者等の被告事件の手続への参加を許可します(刑訴法316条の33第1項)。
裁判所から、被害者等の被害者参加が許可されると、被害者等は、被害者参加制度を利用して、公判に参加することができます。
被害者参加人のための国選弁護制度
被害者参加人が、弁護士を付けて被害者参加したい場合に、お金がなくて、弁護士を付けることができない場合があり得ます。
そのような場合に、
被害者参加人のための国選弁護制度
が用意されています。
被害者参加人のための国選弁護制度は、
被害者参加人につき、資力が乏しい場合であっても、弁護士の援助を受けることができるようにするため、裁判所が被害者参加弁護士を選定し、国が被害者参加弁護士の報酬と弁護費用を負担する制度
です。
被害者参加人のための国選弁護人制度を利用するには、被害者参加人の資力要件があります。
その資力要件とは、
被害者参加人の資力(現金、預金などの資産の合計額)から、犯罪行為を原因として、この制度の利用を請求の日から6か月以内に支出することとなると認められる費用の額(治療費など)を差し引いた額が200万円未満であること
であり、被害者参加人がこの資力要件に当てはまる場合に、被害者参加人は、この制度を利用し、国(裁判所)が選んだ弁護士(弁護士費用は国が負担)を付けてもらうことができます。
ざっくりいうと、被害者参加人の全財産(現金、貯金額の合計)が200万円未満だった場合に、被害者参加人が弁護士費用を負担することなく、国(裁判所)から弁護士を付けてもらえるということになります。
なお、被害者参加人に付いた弁護士を「被害者参加弁護士」といいます。
裁判所が被害者参加弁護士を選定(どの弁護士を選ぶか)するに当たっては、法テラスが被害者参加弁護士の候補を指名し、裁判所に通知する業務を行います(犯罪被害者等保護法11条、12条)。
次回の記事に続く
次回の記事では、
被害者参加制度で被害者参加人ができること(公判期日への出席、検察官に対する意見陳述、証人尋問、被告人質問、弁論としての意見陳述)
を説明します。