刑事訴訟法(公判)

公判の流れ⑭~「証人尋問の際の証人への付添い」「証人尋問の際の証人の遮へい措置」を説明

 前回の記事の続きです。

 公判手続は、冒頭手続→証拠調べ手続 →弁論手続→判決宣告の順序で行われます(詳しくは前の記事参照)。

 前回の記事では、証拠調べ手続のうちの証人尋問に関し、

  • 書面・物・図面等を示しての証人尋問のルール
  • 証人に尋問できる事項、できない事項
  • 裁判官による証人尋問の制限と介入

を説明しました。

 今回の記事では、証拠調べ手続のうちの証人尋問に関し、証人の負担軽減のための措置である

  • 証人尋問の際の証人への付添い
  • 証人尋問の際の証人の遮へい措置

を説明します。

証人の負担軽減のための措置

 刑事訴訟法は、証人尋問を受ける証人の負担軽減のために、

  1. 証人尋問の際の証人への付添い
  2. 証人尋問の際の証人の遮へい措置
  3. ビデオリンク方式による証人尋問

の手続を定めています。

 今回の記事では、①と②について説明ます。

① 証人尋問の際の証人への付添い

 裁判所は、証人を尋問する場合において、証人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、

証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるとき

は、検察官、被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安や緊張を和らげるため、法廷において、証人の証言中、適当な者を証人に付き添わせることができます(刑訴法157条の4第1項)。

 これは、

  • 性犯罪被害などの精神的ダメージを伴う被害を受けた被害者
  • 年少者
  • 知的障害者

などが法廷で尋問を受ける場合、著しい不安や緊張を感じ、このために精神的被害を更に悪化させる可能性があることを考慮したものです。

 証人付添人は、証人のすぐそばに着席し、証人の様子を見守ります。

 ただし、この時、

  • 裁判官や訴訟関係人(検察官、被告人又は弁護人)の尋問や証人の供述を妨げること
  • 証人の供述の内容に不当な影響を与えるような言動をすること

は許されません(刑訴法157条の4第2項)。

② 証人尋問の際の証人の遮へい措置

証人と被告人との間の遮へい措置

 裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、

証人が被告人の面前で供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる場合であって、相当と認めるとき

は、証人の精神的圧迫を軽減するために、検察官、被告人又は弁護人の意見を聴き、法廷で、

証人と被告人との間

に、衝立(パーテーション)を置くなどの遮へい措置を採ることができます(刑訴法157条の5第1項)。

 法廷内において、被告人が証人の姿を見ることができないように、証人と被告人の間にパーテーションを置くというイメージになります。

 この制度は、証人が被告人の面前で供述する際に、証人が受ける精神的圧迫を軽減することにより証人の精神の平穏が侵害されることを未然に防止することを目的とするものです。

 なお、「証人と被告人との間の遮へい措置」は、証人が被告人の面前で供述する際に、証人が受ける精神的圧迫を軽減することにより証人の精神の平穏が侵害されることを未然に防止することを目的として行われるものであり、証人の供述を獲得することを目的として行われる「被告人を退廷」(刑訴法304条の2前段281条の2)とは、目的を異にします。

証人と傍聴人との間の遮へい措置

 裁判所は、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官、被告人又は弁護人の意見を聴き、

傍聴人(法廷の傍聴席で裁判を見ている人)と証人との間

に遮へい措置を採ることができます(刑訴法157条の5第2項)。

次回の記事に続く

 今回の記事では、証人の負担軽減のための手続である

  1. 証人尋問の際の証人への付添い
  2. 証人尋問の際の証人の遮へい措置
  3. ビデオリンク方式による証人尋問

のうち、①と②について説明しました。

 次回の記事では、

③ ビデオリンク方式による証人尋問

を説明します。

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