刑法(公務執行妨害罪)

公務執行妨害罪(1) ~「保護法益」「主体(犯人)」を解説~

 これから公務執行妨害罪(刑法95条1項)について説明します。

刑法95条1項・2項について

 刑法95条は、1項において公務執行妨害罪を、2項において職務強要罪を規定しています。

 いずれも、暴行又は脅迫をもって公務を妨害する犯罪ですが、1項が、公務員の現在の職務執行を対象とする犯罪であるのに対し、2項は、公務の将来の職務執行に向けられた犯罪であるという違いがあります。

公務執行妨害罪の保護法益

 公務執行妨害罪の保護法益は、

公務の円滑な遂行

です。

 公務執行妨害罪の保護法益について述べた判例として、以下のものがあります。

最高裁判決(昭和28年10月2日)最高裁決定(昭和31年7月5日)最高裁決定(昭和31年7月5日)

 これら判例で、「刑法95条の規定は、公務員を特別に保護する規定ではなく、公務員によって執行される公務そのものを保護するものである」と判示しました。

大阪高裁判決(昭和31年9月29日)

「刑法95条の保護法益は、公務員によって執行される公務そのものである」と判示しました。

主体(犯人)

 本罪の主体(犯人)について限定はなく、どのような身分の人でも公務執行妨害の犯人になり得ます。

 公務員の職務の執行を受けている者が、その公務員に暴行・脅迫を加えれば、公務執行妨害罪が成立するのは当然ですが、公務の執行を受けていない何ら関係のない第三者がその公務員に暴行・脅迫を加えた場合でも、公務執行妨害罪が成立します。

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