刑法(公務執行妨害罪)

公務執行妨害罪(8) ~職務行為の適法性が認められた事例②「警察官による警告・制止、現行犯鎮圧の事例」を解説~

公務執行妨害で警察官の職務行為の適法性が認められた事例②

警察官による警告・制止、現行犯鎮圧の事例

 公務執行妨害罪(刑法95条第1項)に関し、警察官による警告・制止、現行犯鎮圧の行為の職務の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとした事例として、以下のものがあります。

大阪高裁判決(昭和27年3月22日)

 警察官が警棒を構えて群衆を押し寄せる行為は、行動による警告として相当の行為であるとし、職務の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

東京高裁判決(昭和38年7月30日)

 警察官が、けんかを始めようとした者の前に立ちはだかり、手で肩を押さえた行為は、警職法5条の警告に当たるとし、職務の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

神戸地裁判決(昭和40年11月1日)

 警察官が、不法に警察署の建造物内に侵入しようとした者の前に立ちふさがり、侵入を阻止する行為は、警職法5条前段の警告に当たるとし、職務の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

最高裁判決(昭和52年5月6日)

 無許可デモ行進に対し、警察官が阻止線を形成する行為の職務の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

最高裁判決(昭和30年2月1日)

 無許可集会を行った者に対する警察官の解散措置の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

東京地裁判決(昭和33年5月6日)

 無許可デモを行った者に対する警察官の解散措置の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

福岡高裁判決(昭和45年10月30日)

 駅構内に滞留するデモ隊を圧縮し、自発的に退去しない者を引っ張り出し、又は押し出して、この者たちを順送りに集札口に向かわせる行為の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました

東京高裁判決(昭和45年9月22日)

 集団行動等を規制し、阻止するためにした警察官による催涙ガス弾筒の発射使用行為の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

仙台高裁判決(昭和56年3月18日)

 警察官が、右翼集団とまさに衝突し、乱闘しそうな過激派集団デモを囲むようにL字型規制をして行進を止めることは、警職法5条に定められた適法な職務行為に当たるとし、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

名古屋地裁判決(昭和46年6月22日)

 警察官が、道路使用許可を受けていない集団を公園内に押し込む行為の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

東京高裁判決(昭和47年10月20日)

 現に犯罪が行われている場合における制止行為を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

福岡高裁判決(昭和28年10月14日)

 争議行為として行われるピケッティングを排除する行為の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

東京高裁判決(昭和41年8月26日)東京高裁判決(昭和47年10月20日)

 ピケッティング威力業務妨害罪を構成する場合において、警察官がピケ隊員を引き抜く行為の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

名古屋高裁金沢支部判決(昭和52年9月29日)

 警察官が、酒気帯び運転による危険を防止するため、車の発進を制止し、引き続きその車を停止させるためエンジンスイッチを切る行為の適法性を認め、その職務を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するとしました。

次の記事

公務執行妨害罪、職務強要罪、辞職強要罪の記事まとめ一覧