刑法(強盗予備罪)

強盗予備罪(6) ~他罪との関係「強盗予備罪と強盗罪、住居侵入罪、暴行罪・傷害罪・脅迫罪、恐喝罪、銃砲刀剣類所持等取締法違反との関係」を判例で解説~

強盗予備罪(刑法237条)と

  • 強盗罪
  • 住居侵入罪
  • 暴行罪・傷害罪・脅迫罪
  • 恐喝罪
  • 銃砲刀剣類所持等取締法違反

との関係について説明します。

強盗罪との関係

 強盗予備罪と強盗罪(刑法236条)との関係について説明します。

強盗予備罪は強盗罪に吸収される

 強盗罪の実行の着手があった以上、強盗が既遂に達するか、未遂にとどまるかにかかわらず、強盗予備罪は強盗罪に吸収され、事後強盗罪は成立せず、強盗罪のみが成立することになります。

 この点について判示した以下の判例があります。

最高裁判決(昭和24年12月21日)

 この判例で、裁判官は、

  • 強盗の予備をしたものが、その実行に着手した以上、それが未遂に終わると既遂になるとを問わず、その予備行為は、未遂又は既遂の強盗罪に吸収されて独立して処罰の対象となるものではない
  • 本件において、原審は既に強盗殺人未遂罪を認定処断したのであるから、もはや強盗予備行為は処罰の対象として独立して審判さるべきものではないのである

と判示しました。

強盗の犯意が継続している限り、強盗予備に関与した共犯者が異なっても、1個の強盗予備罪が成立する

 強盗の意思が継続している限り、強盗予備行為に関与した共犯を異にしても、1個の強盗予備罪が成立するにとどまります。

 この点については前の記事参照。

国外で強盗予備罪・強盗罪が行われた場合の犯罪の成否

 国内において強盗予備行為が行われ、国外において強盗が実行された場合、行為者が日本国民ならば、国民の国外犯規定(刑法3条14号)により処罰することができ、強盗罪の一罪が成立します。

 この場合で、犯人が外国人の場合には、国外で行った強盗罪について処罰はできず、国内で行った強盗予備罪について処罰できるかどうかが問題となります。

 この問題の答えは、強盗の実行の着手があった以上、国内で行った強盗予備罪は、国外で行った強盗罪に吸収されると解すれば、国内で行った強盗予備罪は処罰できないことになります。

 なので、国外で行う強盗に日本人が加担して、国内において、国外で行う強盗の予備行為をしたとしても、強盗予備罪は犯罪は成立しないことになります。

 ただし、強盗予備の過程で、拳銃などの凶器の入手を行えば、それは別個に銃砲刀剣類所持等取締法違反(拳銃所持)などの犯罪は成立し、その罪で処罰することはできます。

住居侵入罪との関係

 強盗予備罪と住居侵入罪(刑法130条)との関係について説明します。

 強盗の目的をもって、人の住居に侵入した場合、強盗罪の実行の着手にいたれば、住居侵入罪と強盗罪(強盗未遂罪)が成立し、住居侵入と強盗は手段と結果の関係に立つので、牽連犯の関係になります。

 強盗の実行の着手に至らず、強盗罪(強盗未遂罪)が成立しない場合でも、事後強盗罪は成立する場合があります。

 参考となる判例として、以下のものあります。

強盗予備罪と住居侵入罪の両罪が成立し、観念的競合になるとした判例

 強盗の目的で拳銃を持って住居に侵入したが、強盗の実行着手に至らなかった場合、強盗予備罪(刑法237条)と住居侵入罪が成立します。

 この場合、強盗予備罪(拳銃を持っての住居侵入)と住居侵入罪とは、1個の行為と解されるので、観念的競合になります。

東京高裁判決(昭和25年4月17日)

 この判例で、裁判官は、

  • 本件の住居侵入は、強盗予備行為に吸収されるのであるというに帰着するが、強盗予備罪は場合によっては、他人の家に強盗に押し入る目的をもって短刀を購入する等の行為によって成立するものであって、常に必ずしも住居侵入を伴うものではない
  • 原審は、被告人がほか2名と強盗しようと共謀し、拳銃1丁を携えて被害者方の塀を乗り越えて同人の看守する同邸宅に侵入した事実を認定し、右被告人らの行為を一面強盗予備罪に該当すると同時に、多面住居侵入に当たるものと認定したものであって、正当であるといわなければならない
  • もし住居侵入が常に強盗予備の中に吸収されるものとすれば、強盗予備罪の法定刑は2年以下の懲役であるのに、住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金であって、法定刑の軽い強盗予備罪が法定刑の重い住居侵入罪を吸収するということになり、結果から見ても妥当を欠くことになるのである

と判示し、住居侵入罪と強盗予備罪を実行した場合、両罪が成立し、両罪は観念的競合になるとしました。

 この判例に対しては、学説の意見があり、強盗の予備行為がいろいろ行われ、その一つとして住居侵入に至った場合、それ以前の予備行為も起訴されて審判の対象となっている限り、住居侵入罪と強盗予備罪とを観念的競合と解することはできず、併合罪とするべきであるとする意見があります。

 この判例の事案のように、強盗の予備行為とされるのが住居侵入だけの場合のみ、強盗予備と住居侵入の行為が1個の行為にして数個の罪名に触れることになり、両罪は観念的競合の関係になります。

強盗予備罪、住居侵入罪、傷害罪の3罪が成立するとした判例

東京高裁判決(昭和38年3月6日)

 この判例は、強盗の目的で家内に侵入し、家人に発見され、所携(しょけい)の棒を持って殴打逃走し、傷害を加えた事案において、暴行前に物色など窃盗行為に着手した事実がなく、また右暴行は逃げるためで、金品強取の目的でないとして強盗致傷罪の成立を否定し、強盗予備罪、住居侵入罪及び傷害罪とが成立するにすぎないとして、公訴時効完成を理由に免訴とした事例です。

 裁判官は、

  • 強盗傷人罪が成立しない要点は、被告人において窃盗罪に着手した後逮捕を免れるために暴行をなしたこと又は強盗罪の構成要件たる金品を強取する手段として暴行をなしたことはいずれも認められない点にある
  • 薪棒で被害者を殴打したことが、強盗罪の構成要件である反抗を抑圧するための暴行であると認むべきか否かについては、検察官所論の如く、被告人の検察官に対する供述調書中には、被告人は金品強奪の犯意の下に右薪棒による殴打をしたのではないかと疑うべき供述が存しないではないが、しかしながら、被告人の捜査段階よりの供述及び被害者らの同様捜査段階よりの供述によって認め得べき被告人の当時の行動は、逮捕を免れ、逃走をまっとうしようとするに急であったという印象を与えこそすれ、あくまでも強盗を働くという意思に基いたものとは解し難いというべきである
  • 本件は強盗傷人罪を構成するとみるには、証拠上欠けるところがあるというべきであり、原審のいうが如く、ただ強盗予備罪、住居侵入罪及び傷害罪の成立があるに止まるとみるべきである

と判示しました。

暴行罪・傷害罪・脅迫罪との関係

 強盗予備罪と暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)、脅迫罪(刑法222条)との関係について説明します。

 強盗の予備をした後、財物奪取行為や物色行為前に発見され、強盗の目的ではなく、逃走などの別の目的で、相手に暴行、傷害、脅迫を加えた場合には、強盗致傷罪(刑法240条)ではく、強盗予備罪と、暴行罪又は傷害罪又は脅迫罪が成立し、各罪は併合罪の関係になります。

 参考となる判例として、以下のものがあります。

東京高裁判決(昭和38年3月6日)(上記の判例)

 この判例は、強盗の目的で家内に侵入し、家人に発見され、所携(しょけい)の棒を持って殴打逃走し、傷害を加えた事案において、暴行前に物色など窃盗行為に着手した事実がなく、また右暴行は逃げるためで、金品強取の目的でないとして、強盗致傷罪の成立を否定し、強盗予備罪、住居侵入罪及び傷害罪を構成するとしました。

大阪地裁判決(昭和34年11月30日)

 この判例は、強盗致傷罪の公訴事実につき、強盗の着手前の別の動機目的による暴行であるとして、強盗致傷罪ではなく、強盗予備罪と傷害罪との併合罪を認めた事例です。

 タクシー強盗の目的でレンガを新聞紙に包んで携帯してタクシーに乗車したものの、運転手に強盗目的を察知されたと思い、逃走しようと運転手を殴って傷害を負わせた事案で、裁判官は、

  • 本件公訴事実は、被告人は被害者Nに対し、タクシー売上金を強奪する目的で判示暴行を加えたもので、強盗傷人罪にあたるというのであり、前示被告人の検察官並びに司法巡査に対する各供述調書によると、右公訴事実にそう自白がなされている
  • しかし、被告人は第一回公判調書及び当公判廷において右自白をひるがえし、判示N運転手のタクシーに乗り込む前から既にタクシー売上金強奪の決行をためらっていたところ、判示第二の暴行の場所に至るまでに、もはや同運転手に売上金強奪の意図を察知されたものと思い、右強奪を決行するどころではなく、その場からのがれたいと焦っていたと供述しているのである
  • 前掲各証拠によつて認められる、(一)被告人が数回にわたって行先を変更したため、N運転手は被告人が強盗の目的で乗車したことを察知して、被告人に何度も降車してくれるように懇願していたところ、被告人は当時乗車賃の持ち合わせがなく、運転手にとがめられることをおそれ進退に窮していた事情が窺われること、(二)本件暴行は傷害の程度等からして、いわゆる自動車強盗としてそれ程強度のものでなかったこと、(三)被告人はその行為においても、暴行に際し、何ら売上金強奪のための言動に出ることなく、かろうじて車外に脱出していること等を総合すると、被告人の右供述はあながち、単なる罪責を免れるための弁解とも認め難く、結局、売上金強奪のための暴行であるとの証明は十分でないといわなければならない
  • しかし、判示のような強盗予備及び傷害の各罪が成立することは各証拠に照して明らかなところである

と判示し、強盗の機会に傷害を行ったものではなく、その場から逃げるために傷害を行ったと認定し、強盗致傷罪ではなく、強盗予備罪と傷害罪のニ罪が成立するとしました。

恐喝罪との関係

 強盗予備罪と恐喝罪(刑法249条)との関係について説明します。

 強盗の目的をもって強盗予備をし、強盗の実行に着手したが、恐喝罪しか成立しなかった場合には、強盗予備罪と恐喝罪の両罪が成立するのではなく、包括して恐喝罪の一罪が成立すると解されます。

 理由は、強盗予備罪は、恐喝の実行の着手があっても、恐喝罪に吸収されるべき性質のものではありませんが、強盗予備罪を独立に処罰する趣旨が強盗実現の危険性にある以上、予備の発展段階が恐喝にとどまる場合まで、これを強盗予備罪として処罰すべき必然性に乏しいと考えられるためです。

銃砲刀剣類所持等取締法違反との関係

強盗予備罪と銃刀法違反との関係について説明します。

名古屋高裁金沢支部判決(昭和30年3月17日)

 この判例は、強盗予備罪と銃刀法違反(拳銃の不法所持)の関係につき、

  • 強盗予備と拳銃の不法所持とは、犯罪の構成要件及び被害法益が異なり、強盗予備と拳銃の不法所持とは別個の行為であり、別個の犯罪と見るべきであって、一個の行為と見ることはできない

と判示し、強盗予備罪と銃刀法違反は、併合罪として、それぞれ成立するとしました。

 強盗予備罪と銃刀法違反は、別個の犯罪であり、両罪は併合罪の関係になるというのが基本的な考え方になります。

 ただし、刃物などの不法所持の形態によっては、強盗予備罪と銃刀法違反が併合罪ではなく、観念的競合になる場合もあります。

 たとえば、強盗予備の行為として、所持を合法的にできる刀剣類や刃物を違法に携帯したことが強盗予備と評価される場合には、強盗予備罪と銃刀法違反が観念的競合になると解されます。

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