住居侵入罪と強盗罪との関係(牽連犯)
住居侵入罪(刑法130条)と強盗罪(刑法236条)の関係について説明します。
強盗罪と住居侵入罪は、保護法益も犯罪構成要件も別なので、両罪は別罪です。
強盗をするために住居に侵入した場合、住居侵入と強盗は、通常、手段結果の関係があるので、牽連犯(けんれんぱん)の関係になります。
この点について、以下の判例があります。
この判例で、裁判官は、
- 住居侵入罪と強盗罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行為は強盗罪の要素に属せず別個独立の行為であり、しかも通常右両罪の間には手段結果の関係のあることが認められるから、原判決が右両罪を刑法第54条第1項後段のいわゆる牽連犯として擬律(ぎりつ)しているのは正当である
と判示しました。
この判例で、裁判官は、
- 住居侵入罪と強盗罪とは、おのおのその被害法益と犯罪構成要件とを異にしているのであって、強盗罪は常に当然住居侵入を伴うものではなく、ただ両者は通常手段結果の関係があるに過ぎない
- されば、原判決が被告人の住居侵入と強盗の所為を刑法54条1項後段にいわゆる牽連犯として擬律したのは正当である
と判示しました。
強盗致死傷罪との関係も同様(牽連犯)
強盗致死傷罪(刑法240条)についても同様であり、住居侵入罪と強盗致死傷罪は牽連犯の関係に立ちます。
この点について、以下の判例があります。
この判例で、裁判官は、
- 住居侵入罪と強盗致死罪並びに強盗傷人罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件をそれぞれ異にし、住居侵入の行為は強盗致死及び強盗傷人罪の要素に属せず、別個独立の行為であるから、前者が後者に処罰上吸収せられるとみなす所論は理由がない
- しかも、右の両者の間には、通常手段結果の関係のあることが認められるから、原判決が判示住居侵入と強盗致死並びに強盗傷人の各所為をそれぞれ刑法第54条第1項後段のいわゆる牽連犯として処断したことは相当である
と判示しました。
強盗予備罪と住居侵入罪との関係(観念的競合)
強盗の目的で住居に侵入したが、強盗の実行着手に至らなかった場合、強盗予備罪(刑法237条)と住居侵入罪が成立します。
この場合、強盗予備罪と住居侵入罪とは、1個の行為と解される限り、観念的競合になります。
この点について、以下の判例があります。
東京高裁判決(昭和25年4月17日)
この判例で、裁判官は、
- 本件の住居侵入は、強盗予備行為に吸収されるのであるというに帰着するが、強盗予備罪は場合によっては、他人の家に強盗に押し入る目的をもって短刀を購入する等の行為によって成立するものであって、常に必ずしも住居侵入を伴うものではない
- 原審は、被告人がほか2名と強盗しようと共謀し、拳銃1丁を携えて被害者方の塀を乗り越えて同人の看守する同邸宅に侵入した事実を認定し、右被告人らの行為を一面強盗予備罪に該当すると同時に、多面住居侵入に当たるものと認定したものであって、正当であるといわなければならない
- もし住居侵入が常に強盗予備の中に吸収されるものとすれば、強盗予備罪の法定刑は2年以下の懲役であるのに、住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金であって、法定刑の軽い強盗予備罪が法定刑の重い住居侵入罪を吸収するということになり、結果から見ても妥当を欠くことになるのである
と判示し、住居侵入罪と強盗予備罪を実行した場合、両罪が成立し、両罪は観念的競合になるとしました。
住居侵入罪と暴行罪・傷害罪・殺人罪との関係
住居侵入罪(刑法130条)と暴行罪(刑法208条)・傷害罪(刑法204条)・殺人罪(刑法199条)との関係について説明します。
住居に侵入し、住居内で暴行・傷害・殺人がなされた場合は、通常、住居侵入と暴行・傷害・殺人は、手段と結果の関係にあります。
なので、住居侵入罪と暴行・傷害・殺人罪は、それぞれ牽連犯になります。
この点について、以下の判例があります。
住居侵入罪と暴行罪が牽連犯であるとした判例
名古屋高裁金沢支部判決(昭和29年12月7日)
この判例で、裁判官は、
- 原審は、被告人の住居侵入並び暴行の各所為を認定し、これに対し刑法第130条、第208条、第45条前段、第48条第2項等を適用し、住居侵入の罪と暴行とを併合罪の関係にあるものとして処断していることが明らかである
- しかしながら、原判決挙示の証拠によれば、被告人は、被害者の許可なくして同人方に立ち入る際、同人もしくはその場に来合わせていた者に対し、暴行、脅迫を加えようとする決意を既に固めていたものであることを認めるに足りる
- 従って、被告人の主観よりすれば、住居侵入罪は暴行の手段であったことが明らかのみならず、客観的立場から見ても、住居侵入と暴行との間には、通常手段結果の関係が存在すると考え得るから、これを併合罪として扱った原判決には、法令適用の誤りがあると言わざるを得ず、右の誤りは判決に影響するから、原判決は破棄を免れない
と判示し、住居侵入罪と暴行罪を併合罪と認定した一審の判決の誤りを指摘し、住居侵入罪と暴行罪は牽連犯の関係にあるとして、第一審の裁判所に裁判のやり直しを命じました。
この判例で、裁判官は、
- 住居侵入をした上、暴行の所為に及んだ場合、右2個の所為は通常手段結果の関係にあるから、刑法第54条第1項後段(牽連犯)を適用して科刑上一罪として扱わなければならない筋合である
と判示しました。
住居侵入罪と傷害罪が牽連犯であるとした判例
大審院判決(明治44年11月16日)
この判例で、裁判官は、
- 人を傷害するため、その住居に侵入したる場合にありては、住居侵入の行為は人を傷害する手段なるをもって、刑法第54条を適用すべきものとす
と判示し、住居侵入罪と傷害罪が牽連犯の関係にあるとしました。
住居侵入罪と殺人罪が牽連犯であるとした判例
大審院判決(明治43年6月17日)
この判例で、裁判官は、
- 甲者が乙者を殺害せんと企てて、丙者の住居に侵入して、その目的を遂げたるときは、右の家宅侵入の所為は殺人行為の手段なるがゆえに、刑法第54条を適用してこれを処分すべきものとす
と判示し、住居侵入罪と殺人罪が牽連犯の関係にあるとしました。
大審院判決(昭和5年1月27日)
この判例で、裁判官は、
- 他人の住居に侵入したる後、偶発的に殺人行為を行いたるときといえども、住居侵入は殺人罪の手段たるものとす
と判示し、住居侵入罪と殺人罪が牽連犯の関係にあるとしました。
この判例で、裁判官は、
と判示し、住居侵入罪と殺人罪が牽連犯の関係にあるとしました。
住居侵入罪と殺人予備罪との関係(観念的競合)
住居侵入罪(刑法130条)と殺人予備罪(刑法201条)との関係について説明します。
殺人予備罪とは、殺人の準備(刃物を持って待ち伏せる、殺人をするための毒物を購入するなど)をした場合に成立する犯罪です。
住居侵入罪と殺人予備罪は、観念的競合の関係に立ちます。
この点について以下の判例があります。
大審院判決(明治44年12月25日)
この判例で、裁判官は、
- 他人を殺害する目的をもって、その住宅に侵入したる者の行為は、一面において殺人予備罪に当たり、他の一面において家宅侵入罪に当たるをもって、いわゆる一個の行為にして2個の罪名に触れるものとし、その重きにしたがって処分すべきものとす
と判示し、住居侵入罪と殺人予備罪が観念的競合の関係にあるとしました。