強盗罪・強盗致傷罪は、「暴行罪・脅迫罪・傷害罪」と「窃盗罪」に分けて起訴されることがある
強盗罪(刑法236条)の法定刑は5年以上の有期懲役と重く、強盗罪で起訴されれば、酌量減軽(刑法66条、71条、68条)されない限り、執行猶予がつかず、必ず実刑になります。
強盗致死傷罪(刑法240条)ともなれば、その法定刑は、無期又は6年以上の懲役(強盗致傷罪)、死刑又は無期懲役(強盗致傷罪、強盗殺人罪)となり、かなり重いです。
【補足説明:酌量減軽について】
執行猶予は、判決内容が3年以下の懲役でないと付すことができません(刑法25条)。
酌量減軽されることで、刑法68条3項の規定により、5年以上の有期懲役が半分の2年6月以上の有期懲役になることから、判決で3年以下の懲役刑を言い渡すことができるようになり、執行猶予を付すことができるようになります。
このように、強盗罪や強盗致死傷罪は、法定刑が重いこともあり、強盗に伴う暴行・脅迫、傷害の程度が軽い場合は、
- 強盗罪を、「暴行罪又は脅迫罪」と「窃盗罪」に分解して起訴する
- 強盗致傷罪を、「傷害罪」と「窃盗罪」に分解して起訴する
ことをして、執行猶予を付けやすくするという事例もあります。
強盗罪の判決における犯罪事実の特定に関する判例
強盗罪の判決で言い渡される犯罪事実(罪となるべき事実)の特定方法について判示した以下の判例があります。
強盗被害品の数量、価格、所有者などを詳細に判示する必要はない
最高裁判決(昭和23年7月22日)
この判例は、強盗罪の「罪となるべき事実」の判決書に記載する強盗被害品の特定について、
と判示しました。
2人が共謀して強盗した事実が認定される以上、共犯者のどちらが現実に脅迫したかを明示しなくてもよい
この判例で、裁判官は、
- 原判決は、被告人は、相被告人(共犯者)Aと共謀の上、原判示の強盗をした事実を認定しているのであり、右の事実は原判決挙示の証拠上、認め得るところである
- しからば、かりに被告人自身が被害者に海軍ナイフを突き付け脅迫をした事実がないとしても、既に共謀の事実が認められる以上、他の共犯者の脅迫行為によって、強盗罪の共同正犯たる責任は免れないのである
- 原判決は、右共犯者のうちのどちらが現実に脅迫の実行行為をしたかということを明示していないけれども、前示のごとく、二人共謀の事実は原判決において明確に認定せられ、かつ、右共犯者のどちらかが現実に脅迫の実行行為をしたことは原判文上おのずからあきらかなのであるから、判決に掲ぐべき被告人の「罪となるべき事実」の摘示としては、原判決の記載はなんら欠くるところはないのである
と判示し、2人が共謀して強盗した事実が認定される以上、共犯者のどちらが現実に脅迫したかを明示しなくてもよいとしました。