人は、脅威やプレッシャーにさらされると、普通ならしない悲観的な思考や行動をとるように変化します。
たとえば、コロナウィルスの流行で、トイレットペーパーなどの日用品の買い占めが起こったのがよい例です。
テレビ報道されるコロナウィルス関連のネガティブな情報が、脅威やプレッシャーになり、私たちを買い占め行動に走らせ、物流を混乱させました。
人間は、脅威やプレッシャーにさらされると、悲観主義に変化する設計になっています。
脅威やプレッシャーで人間は怖じ気づくように設計されている
ライオンなどの猛獣いた狩猟時代においては、人間は、危険な空気を敏感に感じ取り、行動を抑制することで、猛獣に襲われるリスクを減らし、命を長らえてきました。
森で木の実を採取しているときに、茂みの奥の方で、ガサゴソと音がしているのに、ポジティブシンキングでそのまま森の奥に進んでいったらライオンに出くわして襲われて死にます。
脅威やプレッシャーを感じたら、怖じ気づいて逃げるのが、自分の生存可能性を高めます。
人間には、脅威やプレッシャーを感じたら、怖じ気づき、行動を抑制して逃げるという本能が刻み込まれ、子孫に引き継がれてきました。
したがって、現代を生きる私たちも、危険を遠ざけ、生存可能性を高めるため、脅威やプレッシャーを感じると、怖じ気づくように作られています。
脅威やプレッシャー下では、ネガティブな情報で自分の考えを変える
人は、不安を抱く状態になればなるほど、ネガティブな情報を取り入れる傾向が強まります。
脅威やプレッシャー下では、予期せぬ悪い知らせを聞いて自分の考えを変える傾向が強まるということです。
たとえば、会社において、一度仕事でミスをすると、上司はミスをした部下の仕事をよくチェックし、細かい指摘が多くなります。
これは、上司にとって、部下が仕事でミスをした事実が脅威とプレッシャーになり、"再び部下が仕事のミスをするかもしれない"というネガティブな思考に切り替わるためです。
こうなると、上司は、無意識のうちに部下のネガティブな情報を探し始めるので、細かい指摘が多くなります。
脅威とプレッシャーによるネガティブ本能の過剰反応で不合理な行動をとるようになる
問題は、脅威とプレッシャーによって、ネガティブな情報に目を向けてしまう衝動を止めることができなくなることです。
こうなると、ネガティブ本能が過剰反応を起こし、私たちは、危険・不安・恐怖に固執するようになり、うまくいかない可能性に目を向けるようになります。
それによって、極度に悲観的な見解が生まれ、結果として過度に保守的になります。
人間は、いったん脅威とプレッシャーを感じてしまうと、人や出来事の否定的な面に着目するようになり、起こりうる問題ばかりを考えるようになります。
その結果、普通に行動すれば、問題が起こることなく、良い結果を導けることでも、思い悩み精神を消耗した上で不合理な行動をとり、悪い結果を量産するループに入ります。
負のスパイラルに陥る人は、このループに入っています。
ネガティブ本能が過剰反応を起こしている状態では、リスクを冒すことの方が、実際は優れたアプローチである場合でさえ、無難な行動を取る決断をしてしまいます。
チャンスをつかむ賭けに出ることもないので、悪い結果を量産するループから抜け出すこともありません。
私たちは自分の心の状態を意識的に変えて、本能的パターンを打開することができる
人間は「脅威やプレッシャーで悲観主義に変化する」という本能的パターンをもっていることを理解することで、この本能的パターンを打開することができるようになります。
人は、前提の知識を持つことで、本能に基づき沸き起こる衝動に対処できるようになるからです。
ちなみに、自分の本能・思考・行動を客観的に認識することを「メタ認知」といいます。
メタ認知力が高ければ高い人ほど、人間の本能・思考・行動を言葉で定義できるため、自分の心の状態を意識的に変えて、本能的パターンを打開することができます。