脅迫の対象となる 「生命、身体」とは?
脅迫罪は、刑法222条において、
- 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する
- 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする
と規定されています。
条文に記載される「生命、身体」の内容と事例ついて、判例を示して説明します。
「生命」に対する加害の事例
「生命」に対する加害の事例として、以下の判例があります。
- 放火又は殺害をなすべき旨を通告した事例(大審院判決 明示43年11月15日)
- 警察官に対し、爆発物で一家を皆殺しにする旨の書面を送付した事例(大審院判決 大正5年5月15日)
- 交番にダイナマイトを仕掛けて爆発させ、「あなたを殺すと言うておる者もある」などと申し向けた事例(最高裁判決 昭和27年7月25日)
- 暴行の際に「お前みたいな者は、この辺におくわけにはいかないから川に投げ込む」と告知した事例(最高裁判決 昭和30年11月1日)
- 一家を毒殺するなどとの手紙を郵送した事例(山形地裁判決 昭和39年9月8日)
「身体」に対する加害の事例
「身体」に対する加害の事例として、以下の判例があります。
- 配下多数の者が身体に危害を加えることがあるかも知れないと言って、債務の弁済を要求した事例(大審院判決 昭和9年7月19日)
- 祈祷師である被告人が、14、15歳の少年である被害者に、窃盗の自白強要のため、「盗んでいないなら、焼き箸をしごいても火傷しないからしごけ」等と申し向けて被害者をしてその焼き火箸をしごかせ、火傷を負わせた事例(福岡高裁宮崎支部 昭和29年4月23日)
- 短刀又は木刀を条件として表示して、決闘の申込みをする果たし状を郵送した事例(仙台高裁判決 昭和32年2月28日)
「生命」「身体」などに対する加害の事例
「生命」「身体」などに対する害悪告知の事例として、以下の判例があります。
- 職務質間した警察官に「どてっ腹に風穴を開けてやる、命はないぞ」などと申し向けた事例(広島高裁判決 昭和25年2月6日)
- 警察官に対し、警察活動を止めないと必ず不幸が起こるなどと申し向けた事例(大阪高裁判決 昭和29年6月11日)
- 畳の上で死ねたらいい方だなどと申し向けた事例(札幌高裁判決 昭和30年11月15日)
- 「お前を刺してやる、俺は言ったことを実行するんだ」と申し向けた事例(名古屋高裁金沢支部判決 昭和37年5月29日)