刑事訴訟法(公判)

保釈とは? ~「必要的保釈(権利保釈)・裁量的保釈、保釈保証金、保釈の取消し、保釈の執行」を説明

保釈とは?

 保釈は、

一定額の保釈保証金の納付を条件として、裁判所が勾留されている被告人の勾留の執行を停止する決定をし、被告人の拘禁状態を解く制度

といいます。

 保釈が適用されるのは、被告人であり、被疑者に保釈の制度の適用はありません(刑訴法207条1項ただし書き)(被疑者と被告人の違いの説明は前の記事参照)。

 裁判所が保釈を許す場合には、

  • 被告人の住居を制限すること
  • その他適当と認める条件を付すこと

ができます(刑訴法93条3項)。

 保釈の場合は、 勾留の執行停止の場合と異なり、保釈の期間を定めることはできません(刑訴法98条1項)(勾留の執行停止の説明は前の記事参照)。

保釈は、「被告人の請求による保釈」と「裁判所の職権による保釈」の2パターンがある

 保釈は、

  • 勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求による場合(刑訴法88条

とがあります。

 被告人の請求による保釈の場合は、以下の①~⑥(刑訴法89条1号~6号)に該当しないのであれば、裁判所は保釈を許可しなければならないというルールになっています。

 これを「必要的保釈」又は「権利保釈」といいます

  1. 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき
  2. 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき
  3. 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき
  4. 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  5. 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
  6. 被告人の氏名又は住居が分からないとき

 上記の「必要的保釈」に対し、裁判所の職権判断による「裁量的保釈」があります。

 「裁量的保釈」については、裁判所は、

  • 保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度

のほか、

  • 身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情

を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができます(刑訴法90条)。

 裁判所は、刑訴法89条1号~6号までに該当し、「必要的保釈」が認められない場合であっても、裁量によって保釈する「裁量保裁量」をすることができる点がポイントになります。

保釈の可否は他の犯罪事実を考慮することができる

 保釈の可否は、勾留状が発付されている犯罪事実を基準に判断しなければなりません。

 しかし、勾留状が発付されている犯罪事実の事案の内容、性質、被告人の経歴、行状、性格等の事情を考慮する際の資料として、勾留状の発付されていない他の犯罪事実を考慮し、保釈の可否を判断して差し支えないとされます。

 この点につき判示した以下の判例があります。

最高裁決定(昭和44年7月14日)

 裁判官は、

  • 被告人がA、B、Cの3個の公訴事実について起訴され、そのうちA事実のみについて勾留状が発せられている場合において、裁判所は、A事実が刑訴法89条3号に該当し、従って、権利保釈は認められないとしたうえ、なお、同法90条により保釈が適当であるかどうかを審査するにあたっては、A事実の事案の内容や性質、あるいは被告人の経歴、行状、性格等の事情をも考察することが必要であり、そのための一資料として、勾留状の発せられていないB、C各事実をも考慮することを禁ずべき理由はない

と判示しました。

保釈保証金

 裁判所は、保釈を許す場合には、保釈保証金の金額を定めなけれはなりません。

 保証金額は、犯罪の性質・情状、証拠の証明カ、被告人の性格、資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければなりません(刑訴法93条2項)。

保釈の取消し

 裁判所は、以下の①~⑤(刑訴法96条1項1号~5号)に該当する場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定をもって保釈を取り消すことができます。

  1. 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき
  2. 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  3. 被告人が罪証を隠滅し又は隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  4. 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき
  5. 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき

 保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができます(刑訴法96条2項)。

 保釈された者が、刑の言渡しを受けその判決が確定した後、執行のための呼出しを受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければなりません(刑訴法96条3項)。

 ただし、刑が確定する前に被告人が逃亡し、刑が確定するまでに逃亡状態が解消された場合は、保釈保証金を没取することはできません。

 この点を判示した以下の判例があります。

最高裁決定(平成22年12月20)

 裁判官は、

  • 刑訴法96条3項は、その文理及び趣旨に照らすと、禁錮以上の実刑判決が確定した後に逃亡等が行われることを保釈保証金没取の制裁の予告の下に防止し、刑の確実な執行を担保することを目的とする規定であるから、保釈された者が実刑判決を受け、その判決が確定するまでの間に逃亡等を行ったとしても、判決確定までにそれが解消され、判決確定後の時期において逃亡等の事実がない場合には、同項の適用ないし準用により保釈保証金を没取することはできないと解するのが相当である

と判示しました。

保釈の失効

 保釈の効力が失われるときは、

禁錮以上の実刑に処する判決の宣告があったとき

です(刑訴法343条)。

 禁錮以上の実刑に処する判決の宣告があった時は、被告人は直ちに手錠をかけられて収容されます。

 なお、判決が確定するまでは、再度保釈することができます。

 この場合、必要的保釈はできず、裁量保釈が認められるだけとなります(刑訴法344条)。