法律(刑法)

構成要件要素とは?~「客観的構成要件要素」と「主観的構成要件要素」~

構成要件要素とは?

 まず、本題の「構成要件要素」を説明する前に、「構成要件」を説明します。

 構成要件とは、

刑法などの法律に規定されている犯罪の成立要件

をいいます。

 たとえば、窃盗罪(刑法235条)の条文は、

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する』

と記載されていますが、この条文に記載されている他人の財物を窃取したの部分が、構成要件になります。

(構成要件が、刑法などの法律で、どのような位置づけにあるかは、前の記事を参照してください)

 構成要件は、これ自体では内容が漠然としすぎています。

 そこで、

  • 誰が
  • いつ
  • どこで
  • 何を窃取したのか

などの情報を肉付けして、構成要件の内容を詳しく説明し、犯罪事実を特定するのです。

 この

  • 誰が
  • いつ
  • どこで
  • 何を窃取したのか

といった構成要件の内容を具体的にするための要素を「構成要件要素」といいます。

客観的構成要件要素と主観的構成要件要素

 概念というのは、特徴を抽出し、抽出した特徴を比較することで、その概念の特性や性質を理解できるようになります。

 構成要件要素も概念です。

 構成要件要素の理解を深めるため、特徴を抽出して比較して説明します。

 構成要件要素は、「客観的構成要件要素」と「主観的構成要件要素」に分けて考えることができます。

 客観的構成要件要素は、その存在を外見上認識できる要素であり、行為、行為の主体、行為の客体、行為の状況、行為の結果などの構成要件要素のことをいいます。

 主観的構成要件要素は、犯人の内心にかかるもの(たとえば殺意)で、その存在を外見上認識できない要素のことをいいます。

 それでは、「客観的構成要件要素」と「主観的構成要件要素」を詳しく説明していきます。

客観的構成要件要素

 客観的構成要件要素は、

  • 行為
  • 行為の主体
  • 行為の客体
  • 行為の状況
  • 行為の結果

にカテゴリー化できます。

・行為

 構成要件要素としての行為は、「殺す」「窃取する」などの法律の条文に記載されている行為をいいます。

・行為の主体

 行為の主体とは、犯罪を行った人(犯人)をいいます。

・行為の客体

 行為の客体とは、犯罪行為が向けられた対象をいいます。

 分かりやすくいうと、犯罪の被害者です。

 物が「行為の客体」になる場合もあります(窃盗罪における、盗まれた物(被害品)など)。

・行為の状況

 行為の状況とは、たとえば、消火妨害罪(刑法114条)の条文に記載されている「火災の際」が該当します。

 犯罪の成立に、一定の状況があることを要件としている犯罪については、行為の状況が必要になります。

・行為の結果

 行為の結果とは、犯罪行為の結果をいいます。

 たとえば、殺人罪における「人の死亡」が行為の結果に当たります。

 行為の結果は、「結果犯」と「挙動犯」に分けられます。

結果犯と挙動犯を深掘り説明】

・結果犯

 結果犯とは、結果の発生を必要とする犯罪です(殺人罪、窃盗罪など)。

 結果犯の場合、犯行に及んでも結果まで至らなければ犯罪は成立しません。

 コンビニのおにぎりを盗もうとして、おにぎりをつかんでも、そっと棚に戻せば窃盗罪は成立しません。

 ちなみに、刑法の大部分が結果犯です。

・挙動犯

 挙動犯とは、犯罪の結果の発生は必要なく、一定の行為が行われれば犯罪が成立する犯罪です。

 行動すること自体が犯罪になる犯罪ということです。

 「行動する」➡「即、犯罪成立」となります。

 たとえば、住居侵入罪(刑法130条前段)、偽証罪(刑法169条)、不退去罪(刑法130条後段)が挙動犯にあたります。

主観的構成要件要素

 「客観的構成要件要素」に対する概念である「主観的構成要件要素」の説明をはじめます。

 主観的構成要件要素とは、

 犯人の内心(心理状態)

をいいます。

 たとば、「物を盗もうとした」「人を殺そうした」などの『故意(犯意)』が主観的構成要件要素になります。

 主観的構成要件要素は、「一般的主観的要素」と「特殊的主観的要素」に分けることができます。

一般的主観的要素

 一般的主観的要素は、

  • 故意
  • 過失

のことをいいます。

 故意とは、たとえば、

「物を盗もうとした(窃盗罪)」

「人を殺そうした(殺人罪)」

が故意にあたります。

 ここでいう故意は、『構成要件的故意』と呼ばれます。

 

 過失とは、たとえば、

「不注意により人を車ではねた(過失運転致死傷罪)」

が過失にあたります。

 ここでいう過失は、『構成要件的過失』と呼ばれます。

『構成要件的故意』と『構成要件的過失』を深掘り説明

 『構成要件的故意』とは、

  犯罪事実を認識していること

をいいます。

 たとえば、「人を殺すつもりで殺した」という場合です。

 この場合、殺人罪が成立します。

 もし、「殺すつもりはなかったのに、人を殺した」場合は、過失致死罪が成立します。

 ちなみに、故意に行った犯罪を「故意犯」といいます。

 

 『構成要件的過失』とは、

犯罪事実を認識していなかったことに、犯人の不注意が認められること

をいいます。

 ちなみに、過失により行った犯罪を「過失犯」といいます。

 

特殊的主観的要素

 特殊的主観的要素とは、

「一般的主観的要素」以外の主観的要素

をいいます。

 いいかえると、故意・過失(一般的主観的要素)以外の犯人の内心についての主観的要素のことをいいます。

 具体的には、特殊的主観的要素は、

  • 目的犯における目的
  • 表現犯における内心の心理状態

のことを指します。

目的犯における目的

 目的犯における目的とは、たとえば、営利誘拐罪(刑法225条)の条文に規定されている「営利の目的」という犯人の内心の部分がこれにあたります。

 目的犯における「目的」とは、

  犯罪を成し遂げようとする意欲

をいいます。

 ちなみに、営利誘拐罪の「営利の目的」のように、条文に記載されているものもあれば、条文に記載されていないものもあります。

 たとえば、窃盗罪(刑法235条)は、条文に「窃取の目的」という文言が記載されてもよいところですが、記載されていません。 

表現犯における内心の心理状態

 表現犯とは、犯人の内心の心理状態が表現されていることが犯罪の成立要件になる犯罪です。

 表現犯の代表例は、偽証罪(刑法169条)です。

 偽証罪とは、裁判で嘘の事実を証言する犯罪です。

 「嘘の事実を証言してやる!」という心理状態で、嘘の事実を証言することで偽証罪が成立します。

まとめ

構成要件要素は、

  • 客観的構成要件要素
  • 主観的構成要件要素

に大別できます。

 客観的構成要件要素は、その存在を外見上認識できる構成要件要素をいいます。

 主観的構成要件要素は、その存在を外見上認識できない構成要件要素(犯人の内心(故意)、過失など)のことをいいます。

 今回、学習した内容をまとめると、以下のチャート図のようになります。