刑法(強要罪)

強要罪(6) ~「強要罪の成立を認めるには、暴行脅迫と結果との間に因果関係を要する」を判例で解説~

強要罪の成立を認めるには、暴行脅迫と結果との間に因果関係を要する

 強要罪(刑法223条)の成立を認めるにあたり、強要の手段としての脅迫・暴行と、他人に義務のないことを行わせ、又は、権利の行使を妨害したこととの間には、因果関係が存在することが必要となります。

 脅迫が手段とされた場合にも、相手方が現実に畏怖心を生じ、その結果として、義務のないことを行い、又は、権利の行使を妨害されたことがなければなりません。

 この点について、参考になる判例として、次のものがあります。

最高裁判決(昭和25年2月7日)

 この判例で、裁判官は、

  • 人に脅迫を加え、その脅迫状態を利用して義務なき事を行わしめれば、刑法第223条第1項のいわゆる強要罪が成立する
  • 被告人らは、Aが被告人らの要求に応じないときは、Aに対してどんな危害を加えるかも知れないような気勢を示してその要求の承認を迫り、遂にAをして、自分の義務でもないのに、その要求に応ずる旨の覚書を交付せしめたのである
  • さすれば、原判決が被告人らの所為を刑法第223条第1項の罪にあたるものとしたのは正当である
  • 論旨(※弁護人の主張)は、原判決には、被告人らの行為と、Aの畏怖心と、覚書交付との間に一連の因果関係の存することの摘示及び判断を欠いていると非難しているけれども、被告人らが、通常人ならば畏怖の念を生ずるであろうような脅迫をAに与え、かつ、この脅迫状態を利用して義務なきことを行なわしめたことは、判決文自体によって明らかであるから、論旨は理由がない

と判示し、脅迫と被害者が義務のないことを行ったこととの間に因果関係があることを前提とし、強要罪の成立を認めました。

暴行脅迫の相手と義務のないことを行わせられる者とが同一人でない場合の因果関係の認定

 因果関係については、暴行脅迫の相手方と義務のないことを行わせられる者とが同一人でない場合には、両者の共感関係や共感状況などを確認し、因果関係の認定を慎重に行うべきとされます。

次の記事

強要罪(1)~(13)の記事まとめ一覧

 強要罪(1)~(13)の記事まとめ一覧