法律(刑法)

詐欺罪⑲ ~「クレジットカードを使用した詐欺」を判例で解説~

クレジットカードを使用した詐欺

 詐欺罪(刑法246条)において、クレジットカードを使用した詐欺罪の判例を紹介します。

代金支払の意思も能力もないのに、自己名義のクレジットカードを使用した場合の判例

 代金支払の意思も能力もないのに、自己名義のクレジットカードを呈示使用して、加盟店(クレジットカードが使用できるお店)から商品の交付を受け、若しくは財産上の利益を得たときは、加盟店を被害者とする詐欺罪が成立します。

和歌山地裁判決(昭和49年9月27日)

 この裁判で、被告人の弁護人は、クレジットカード利用による詐欺罪は成立しないことについて、以下のような主張をしました。

 弁護人は、

  • クレジットカード利用による信用販売の取引形態は、基本的には会員とカード会社との間、同会社と加盟店との間の二面的な契約により成立しているもので、会員と加盟店相互間には、何らの契約も存在しない
  • 右契約に基づき、会員はカード会社から貸与されたカードを利用して、加盟店から物品を購入することができ、右物品を販売した加盟店は所定の手続を経由してカード会社から確実に代金決済をうける仕組みであり、有効なカードを呈示した会員に対し、右信用販売を拒絶できない旨の規約となっているから、仮に会員において、カード呈示に際し、代金支払の意思および能力がなく、後日カード会社にその代金を支払わなかったとしても、同会社に対し、債務不履行民事責任を負うは別格、カード会社から確実に当該代金を決済してもらえる加盟店を欺罔して損害を与えたことにほかならない
  • 本件において、被告人は、正当な会員資格を有し、公訴事実掲記のように自己名義の有効なカードを提示して各加盟店から物品の販売交付をうけたものであり、この点に関し欺罔行為はないし、右カードの有効なことを確認して、販売譲渡を履行した同店店員をして錯誤に基づき処分行為をさせたものでもないから、その所為は、詐欺罪を構成しない

と主張しました。

 これに対し、裁判官は、

  • クレジットカードなどによる継続的な信用販売契約は、信用を供与するカード会社を中心として結ばれた会員契約および加盟店契約の各特約条項(規約)により組み立てられているものであるが、叙上契約所定の法律関係は、事後においてTELされる会員と加盟店間の個々の売買契約決裁の手段たる性格をもち、これを媒体として順次顕在化するものであり、その売買の都度、会員は、加盟店に対し、直接に債務を負担し、前記加盟店契約所定の代金決済がなされないとき(例えばカード会社に加盟店に対する債務不履行のあったとき、加盟店の売上票が所定期間内にカード会社に送付されなかったため同会社が免責されたときなど)には、直接加盟店に対し、代金債務を履行する義務があり、この点カード利用行為の法律効果は、通常の売買と何ら異なるところがない
  • ただ、この種信用販売が通常の売買と異なるところは、その代金の決裁がカード会社によって担保され、その決済手段として前記特約条項(規約)が存在する点にあり、同条項によりカード会社が加盟店に対し代金を決済したときには、事後の権利関係に変動を生じ(右決済と同時に、加盟店からカード会社に対し、代金債権の譲渡がなされて、その債権者が交代するか、カード会社の立替払(連帯保証債務の履行)により、同会社に会員に対する請求権が発生するかのいずれかの法律構成による)終局的には、会員(債務者)がカード会社(債権者)に対し、代金又は求償債務を負担することとなるのであるが、右最終段階におけるカード会社と会員間の法律関係のみを切り離し、その前段階において存在する会員の加盟店に対する第一次的な代金債権を度外視し、同債務がカード会社によって店舗される点を強調して、加盟店が右販売にあたり、会員自身の代金支払の意思および能力を考慮する必要が全くないものと即断することはできない
  • かえって、会員と加盟店間の個々の売買は、高度な信頼関係を基調とする継続的な前掲信用販売契約の根幹をなすものであり、前掲各特約条項で定められた決済手段には、これに奉仕する機能をもつに過ぎないから、右売買契約に当たり、加盟店は会員の支払資力、特に代金支払の意思および能力の有無、正常な取引の申し込みであるかどうかにつき、関心と利害関係をもつものといわねばならない
  • このことは、加盟店がカード会社より代金決済がなされていない事態に備え、会員に対する代金債権の履行請求を確保する必要のあること、右信用取引機構の存立維持のため、カード会社に対し、その不良債権の発生を回避すべき信義則上の義務を負担していることなどに徴しても明らかである
  • また、仮に、加盟店が会員に代金決済の意思能力がないことを知悉しながら、物品を販売交付したような場合には、カード会社から違約金又は権利濫用などと抗争され、代金の支払を絶されるおそれなしとしないのである
  • 以上の考察によって明らかにように、加盟店は代金決済の意思能力のない会員が、信用取引に名を借り、前記カードを呈示しても、その情を知ったときには、当然、物品の販売を拒否できるものと解すべきであり、このような措置にでても規約(信用販売拒絶禁止の条項)に抵触するものとはいえない
  • けだし、右の条項は正常な取引意思をもつ会員カード利用行為の保護を目的として設けられた趣旨のものと解されるからである
  • 従って、被告人が各加盟店に対し、判示認定のように加盟店はもちろん、カード会社に対しても代金支払の意思および能力がなく、正常な取引意思がないのに、これあるように仮装して各加盟店にカードを呈示し(加盟店に対する欺罔行為)、これに気付かない加盟店店員をして代金決済の意思能力のある正常な取引の申し込みであると誤信させ(錯誤)、物品を交付(錯誤に基づく処分行為)させた各所為は、いずれも詐欺罪を構成するものと解するのが相当である

と判示しました。

福岡高裁判決(昭和56年9月21日)

 被告人が、代金を支払う能力も意志もないのに、自己名義のクレジットカードを使用して、カードの加盟店から、物品や飲食物を購入し、ホテルに宿泊した行為について、裁判官は、

  • クレジットカードを利用する場合でも、それが売買であれ、飲食あるいは宿泊であれ、すべてその代金は利用客が負担することになることは言うまでもなく、右代金は中間であれ、販売会社により加盟店へ立替払されるが、最後に利用客から信販会社へ返済されることが前提となって、この制度が組立てられていることは明白である
  • したがって、会員がカードを呈示し、売上票にサインすることは、とりも直さず右利用代金を信販会社に立替払してもらい、後日これを同会社に返済するとの旨の意思を表明したものにほかならず、カードの呈示受けた加盟店においても、その趣旨で利用客から代金が信販会社に返済されることを当然視して利用客の求めに応じたものと解するのが相当である
  • もし利用客に代金を支払う意思や能力のないことを加盟店が知れば、クレジットカードによる取引を拒絶しなければならないこと信義則上当然のことであり、このような場合にまで右拒絶が信販会社によって禁止されていることは到底考えられない
  • 一見確かに、加盟店はカード利用による代金を信販会社から確実に支払ってもらえるから、利用客の信販会社に対する代金支払の有無などにかかずらう必要がないかのように考えらがちであり、この点、原判決の無罪理由に一理ないとは言えないが、前叙のようなクレジットカード制度の根本にさかのぼって考えると、一面的な見方と言うほかない
  • 結局、被告人が、本件において信販会社に対して、その立替払金等を支払う意思も能力も全くなかったのに、クレジットカードを使用した以上、加盟店に対する関係で、右カードの使用(呈示)自体がこれをあるように仮装した欺罔行為と認めるのが相当であり、その情を知らない加盟店からの財物の交付を受け、若しくは財産上の不法の利益を得た本件各犯行は、詐欺罪に当たると言わなければならない

と判示しました。

名古屋高裁判決(昭和59年7月3日)

 被告人が、代金を支払う能力も意志もないのに、自己名義の株式会社Aのクレジットカードを使用して、カードの加盟店から、腕時計などを購入した行為について、裁判官は、

  • 本件において、株式会社Aも各加盟店側も一致して、従来から、各加盟店においてクレジットカードを提示して商品の購入を希望する者が、その代金を支払う意思・能力がない場合にまで、各加盟店が取引を拒絶できないものではない
  • (被害店舗の従業員は、)被告人が商品の代金を、後日、株式会社Aに支払う意思も能力もないと分かっていたら、提示されたのが有効なカードであっても、被告人に商品を売り渡すようなことはしなかった旨供述している
  • 以上の事実関係に徴すると、株式会社Aから自己名義のクレジットカードの交付を受けていた被告人が、右カードを使用して加盟店から商品を購入するに際し、商品代金を会員規約に則って支払う意思も能力もないのに、これあるように装った点は、刑法246条1項にいう欺罔に該当するというべきである
  • 本件において、被欺罔者(被害店舗従業員)は、被告人の右のような欺罔行為のために、被告人において会員規約に則って商品代金を支払う意思・能力があると誤信し、その結果、各商品を売買名下に被告人に交付した状況が明認されるの為ならず、右欺罔行為による錯誤に基づいて商品を被告人に交付したこと自体、すでに商品代金を後日株式会社Aから受領しているという事実はなんら被告人に詐欺罪の成立を認める支障となるものではない
  • したがって、被告人の本件所為は、刑法246条1項の詐欺罪を構成するものと解するのが相当である

と判示しました。

東京高裁判決(昭和59年11月19日)

 この判例で、被告人の弁護人は、

  • クレジットカードによる物品の販売においては、クレジット会社により代金が立替払いされるため、販売店は購入者がクレジット会社に代金を支払う意思及び能力を有しているかどうかについて、全く関心を有していないのであるから、被告人がクレジット会社に対し、代金を支払う意思も能力もないのに、これあるように装って、物品を購入しても欺罔行為があるとはいえない
  • また、販売店が被告人にクレジット会社に対する代金支払の意思及び能力があると見誤ったとしても、販売店に錯誤があるといえず、したがって、被告人の本件所為は、刑法246条1項の詐欺罪の構成要件に該当しない

と主張しました。

 これに対し、裁判官は、

  • クレジットカードによる販売の仕組みは、クレジット会社との間にクレジット契約を締結して、クレジット会社からクレジットカード会社の貸与を受けた会員が、右クレジット会社との間に加盟店契約を締結している加盟店において、右クレジットカードを呈示してクレジットカードにサインすれば、その場で代金を支払うことなく物品を購入することができ、右代金については、後日、販売店からの右売上票の呈示によってクレジット会社から販売店に立替払いがなされ、さらにクレジット会社はこれを利息あるいは手数料とともに、会員の銀行口座から振替入金の形で右会員から支払いを受けるというものであり、クレジット会社による会員への信用供与を内容とするシステムに他ならないところ、右システムは、会員が後日クレジット会社に代金及び利息(あるいは手数料)を必ず支払うことを前提とするものである以上、会員に、後日クレジット会社に代金及び利息(あるいは手数料)を支払う意思も能力もないことが明らかな場合には、販売店は、右会員に対し、物品の販売を拒否することにより、クレジット会社に不良債権が発生しないようにすべき信義則上の義務をクレジット会社に対して負っていることは、右システム自体からして、おのずから明らかである
  • したがって、販売店において、会員が後日クレジット会社に代金及び利息(あるいは手数料)を支払う意思も能力もないことを知りながら会員に物品を販売した場合には、クレジット会社は右販売店に対し、信義則違反を理由として、右代金の立替払いを拒むことができるといわなければならない
  • 以上の法律関係に照らせば、会員が後日クレジット会社に対し、代金及び利息(あるいは手数料)を支払う意思及び能力を有するかどうかについて、販売店として関心を持たざるをえないことは明らかであり、会員が販売店の従業員に対して、後日クレジット会社に対し代金及び利息(あるいは手数料)を支払う意思も能力もないのに、これあるように装い、右従業員がその旨誤信し、物品を販売した場合には、会員の詐欺も従業員の錯誤もあるといわざるをえず、刑法246条1項の詐欺罪の構成要件に該当することは明らかである

と判示しました。

他人名義のクレジットカードを使用した場合の判例

東京高裁判決(昭和56年2月5日)

 この判例は、拾得した他人名義のクレジットカードを、加盟店に無効通知がされる前に不正に使用して、加盟店から商品を入手したり、宿泊飲食した行為について、加盟店に対する詐欺罪が成立するとしました。

 被告人の弁護人は、

  • 原判決は、被告人が拾得したクレジットカード(以下単にカードという)を利用して商品を入手したり、宿泊飲食した行為について詐欺罪の成立を認めたが、カード名義人がカードを喪失しても、クレジット会社に喪失届が出され、同社から右カードによる信用販売制度に加入している各加盟店(以下単に加盟店という)に対し、無効カード通知書が送付されるまでの間に、カードにより商品の販売等をした場合には、加盟店はクレジット会社の銀行口座から代金相当額の金員を自動的に入金してもらえることとなっているところ、本件カードの名義人であるAは、カードの喪失届を出していなかったのであるから、被告人に本件カードを使用されて商品の販売等をした加盟店は代金相当額の金員を取得することができ、そこに何ら財産上の損害は発生していないから、被告人の行為は、詐欺罪の成立要件を欠き、罪とならない

と主張しました。

 これに対し、裁判官は、

  • 犯人の詐欺行為により錯誤に陥り、その結果、犯人に物品等財物を交付・あるいは犯人を宿泊飲食させる等して、その代金相当額の財産上の利益を提供した場合には、それだけで詐欺罪は成立し、その結果、被害者の全体としての財産的価値が減少することは必要ではないから、被欺罔者と第三者との関係において、私法上あるいは当事者間の約定等にもとづき、その損害が補填されることがあっても、詐欺罪の成立は妨げられない
  • また、もともと財産の交付、財産上の利益の提供によるそれらの占有の喪失事態を損害と解し得るから、損害の補填があっても、財産上の損害が発生しなかったとはいい得ないことは明白である

と判示し、詐欺罪の成立を認めました。

名義を偽って取得したクレジットカードを使用した場合の判例

東京高裁判決(昭和60年5月9日)

 この判例は、被告人が名義を偽ってクレジットカードを取得し、そのカードを使用して商品を購入した行為について、被告人の代金支払の意思・能力の有無にかかわらず、詐欺罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • クレジットカードシステムを利用した代金後払いによる商品売買については、代金債務を負担するクレジット契約上の当事者が誰であるかは、クレジットカードを発布し、商品を売り渡すかどうかを判断するにあたって重要な要素といわなければならない
  • 被告人は、被害会社から電気製品等を割賦で購入し、これを質屋に入質して換金し、小遣いなどに充てていたため、購入代金がかさみ、これ以上被害会社からは自己名義で商品を割賦購入できない状態にあったこと、従って、被告人がAと偽っていることが判明すれば、被害会社の店員が被告人にクレジットカードを発布し、商品を月賦販売するはずもないことが認められることからしても、本件において、被告人がA本人であると偽って、その旨誤信させたこと自体が欺罔行為となるといわなければならない
  • 従って、原判決が、被告人の代金支払の意思及び能力の有無について認定判示することなく、被告人がA本人である偽った点を欺罔行為の内容とした件について詐欺罪の成立を認めたのは正当である

と判示し、詐欺罪の成立を認めました。

他人名義のクレジットカードを使用した場合の判例

大阪高裁判決(平成元年11月15日)

 この判例は、拾得した他人名義のクレジットカードを呈示し、名義人の許諾があるように装って、商品の購入を申し入れる行為は、詐欺罪が成立するとしました。

 被告人の弁護人は、

  • クレジットカード一般につき、正当な利用権限者は名義人本人に限られていることは公知の事実であるところ、被告人が本件クレジットカードの名義人(女性名義)でないことは一見明白で「正当な利用権限」を有しないことが明らかであり、各加盟店担当者も被告人が本件カードの名義人本人ではないことに気付いているから、被告人の欺罔行為及び各被欺罔者の誤信の具体的内容を何ら判示していない原判決には理由不備の違法がある

と主張しました。

 これに対し、裁判官は、

  • 加盟店規約上、本件クレジットカードの使用権限を有する者は、名義人本人に限られているが、本件のほとんどの場合、加盟店担当者らは、被告人が本件クレジットカードの名義人本人でないことを知悉しながら、被告人が名義人本人の家族等であろうと考えて、右クレジットカードによる商品販売等に応じていること、被告人は本件以外にも多数回本件クレジットカードを使用して、本件同様の手口で商品を購入等していると窺えること、被告人の累犯前科の犯罪事実中にも、本件同様、不正に入手した女性名義のクレジットカードを使用して数回商品を騙取した事犯があること等の事実が認められる
  • これらの事実に照らすと、前示のとおり、クレジットカードによる取引の実情は、必ずしも加盟店規則に厳格に則ったものでなく、クレジットカードの利用者がカードの名義人本人でない場合であっても、名義人本人の家族の利用を認める扱いが相当程度行われていると認められ、被告人はそのように装って本件カードを呈示し、商品の購入を申し込んだのであるから、原判決が、被告人が「正当な利用権限を有する。」ことを仮装し、その旨誤信させたと認定した点に誤認があったとはいえない
  • (弁護人は、)被告人には月収が30万円あり、その生活ぶりからも代金の支払能力は十分にあったというが、本件犯行のように、不正に入手した他人名義のクレジットカードを使用して商品を入手した場合、犯人(不正使用者)には、もともと代金を支払う意思も又は自己の負担においてカードシステム所定の支払方法で代金を支払う意思も能力もないことが明らかであるから、犯人がカードの正当な利用権限を有するもののように装い、カードを呈示して欺罔者をその旨誤信させ、よって商品の交付を受ければ、直ちに詐欺罪が成立し、犯人の支払能力の有無は、同罪の成立に消長を来すものではない
  • 原判決は、「後日、クレジットカードシステム所定の支払方法により、その代金の支払を受けられるものと誤信させた」旨認定したが、各加盟店等は、いずれも後日、同カードシステム所定の支払方法により、その代金の支払を受けており、加盟店担当者らには、右誤信は存在せず、その点に事実の誤認があるといい、各加盟店等はいずれも後日右所定の支払方法によって代金の支払を受けているから、加盟店担当者らに右誤信はなく、原判決が右の点で事実を誤認したことは所論のとおりであるが、詐欺罪の成立には、必ずしも全体としての被害者の財産的価値の減少が必要でないと解されるから、右支払について加盟店担当者らの誤信がなかったとしても、詐欺罪の成立することに変わりはない

と判示し、詐欺罪の成立を認めました。

東京高裁判決(平成3年12月26日)

 代金支払の意思も能力もないのに、カード名義人を偽り、自己がカード使用の正当な権限を有するように装い、他人名義のクレジットカードを呈示した場合は、詐欺罪が成立するとしました。

 被告人の弁護人は、

  • 本件においては、処分行為と因果関係のある欺罔行為はなく、また、被告人には代金の弁済の意思も能力もあり、更に、被告人が本件クレジットカードを使用することにつき、カード名義人の黙示の承諾があったから、右いずれの点からみても、被告人について詐欺罪は成立しない

と主張しました。

 これに対し、裁判官は、

  • クレジットカード制度は、カード名義人(カード会員)本人に対する個別的な信用を供与することが根幹となっているものであるから、カード使用者がカードを利用する正当な権限を有するカード名義人本人であるかどうかがクレジットカード制度の極めて重要な要素であることは明らかで、カード名義人を偽り、自己がカード使用の正当な権限を有するかのように装う行為は、まさに欺罔行為そのものというべきである

と判示し、被告人の代金の支払の意思や能力にかかわらず、クレジットカード名義を偽った行為が欺罔行為であるから、詐欺罪は成立するとしました。

最高裁決定(平成16年2月9日)

 他人名義のクレジットカードの所持者である犯人が、カードの名義人に成り済まして、正当な利用権限がある旨従業員を誤信させて商品を購入する行為は、カードの加盟店に対する詐欺罪を構成する、さらに、犯人が、カードの名義人からカードの使用を許されていて、カードの名義人において決済がなされると誤信していたとしても詐欺罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 被告人は、本件クレジットカードを入手した直後、加盟店であるガソリンスタンドにおいて、本件クレジットカードを示し、名義人のBに成り済まして自動車への給油を申し込み、被告人がB本人であると従業員を誤信させてガソリンの給油を受けた
  • 上記ガソリンスタンドでは、名義人以外の者によるクレジットカードの利用行為には応じないこととなっていた
  • 本件クレジットカードの会員規約上、クレジットカードは、会員である名義人のみが利用でき、他人に同カードを譲渡、貸与、質入れ等することが禁じられている
  • また、加盟店規約上、加盟店は、クレジットカードの利用者が会員本人であることを善良な管理者の注意義務をもって確認することなどが定められている
  • 以上の事実関係の下では、被告人は、本件クレジットカードの名義人本人に成り済まし、同カードの正当な利用権限がないのにこれがあるように装い、その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けたことが認められるから、被告人の行為は詐欺罪を構成する
  • 仮に、被告人が、本件クレジットカードの名義人から同カードの使用を許されており、かつ、自らの使用に係る同カードの利用代金が会員規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたという事情があったとしても、本件詐欺罪の成立は左右されない

と判示しました。