法律(刑法)

詐欺罪(76) ~詐欺利得罪(2項詐欺)⑤「詐欺利得罪の着手時期と既遂時期」を判例で解説~

詐欺利得罪の着手時期

 刑法246条2項の詐欺利得罪(2項詐欺)の着手時期は、

行為者が財産上不法の利益の取得を目指して人を欺く行為を開始した時点

です。

詐欺利得罪の既遂時期

 詐欺利得罪(2項詐欺)は、

行為者の人を欺く行為によって相手方が錯誤に陥り、財産的処分行為を行ったことに基づいて、行為者又は第三者が財産上の利益を取得した時

既遂に達します。

 本罪が成立するためには、人を欺く行為と財産上の利益の取得との間に因果関係が存在する必要があります。

 人を欺く行為と財産上の利益の取得との間の因果関係の存在に言及した判例として、以下の判例があります。

大審院判決(大正4年11月6日)

 この判例で、裁判官は、

  • 債務者が裁判所を欺罔して債務の履行を免れたりとするには、その債務履行の免除が、裁判所を欺罔したる結果に基づくことを要するものとす

と判示し、詐欺罪が成立するためには、犯人の相手を欺く行為と、犯人が得た利益との間に、因果関係が必要であるとしました。

名古屋高裁判決(昭和27年8月22日)

 この判例の事案は、

  • 山林等の権利書を担保として当座貸越を受けていた者がその返済を迫られ、偽造の増資新株式申込証拠金領収証を真正なもののように装い、担保に差し入れて相手方を欺き、金員の貸出しを受け、現実交付に代えて先の貸越額の返済に充当し、その結果、山林等の権利書の返還を受けた

という事案です。

 裁判官は、

  • 当座貸越債務の返済を免れた点においては、人を欺く手段と直接の因果関係が存在するから詐欺罪は成立するが、山林等の権利書の返還を受けた点については、当座貸越債務関係終了に伴う当然の後始末としてなされただけのことで、人を欺く手段との間に直接因果関係を認めがたいから詐欺罪は成立しない

としました。