刑事訴訟法(公判)

裁判員制度とは?② ~「裁判員の選任手続」「被害者特定事項の秘匿のルール」を説明

 前回の記事の続きです。

 前回の記事では、「裁判員制度の対象事件」「裁判官と裁判員の権限」などを説明しました。

 今回の記事では、「裁判員の選任手続」「被害者特定事項の秘匿のルール」について説明します。

裁判員の選任手続

 裁判員の選任手続について説明します。

 裁判員の選任手続は、裁判員法で以下のように定められています。

① 裁判員は、衆議院議員の選挙権を有する国民の中から選任されます(裁判員法13条)。

② 裁判員の選任手続は、裁判官と裁判所書記官が列席し、かつ、検察官と弁護人が出席して行います(裁判員法32条1項)。

③ 裁判所は、必要と認めるときは、裁判員の選任手続に被告人を出席させることができます(裁判員法32条2項)。

④ 裁判員選任手続において、裁判長は、裁判員候補者に対し、選任資格、欠格事由、就職禁止事由、事件に関連する不適格事由、辞退事由、その他の不適格事由の有無の判断に必要な質問をすることができます(裁判員法34条1項)。

 陪席裁判官(裁判員裁判に参加する裁判長以外の裁判官)、検察官、被告人、弁護人は、裁判長に対し、裁判員の選任の判断に必要と思料する質問を裁判長が裁判員候補者に対してすることを求めることができます(裁判員法34条2項)。

⑤ 裁判所は、裁判員の選任資格がない裁判員候補者、欠格事由、就職禁止事由、事件に関連する不適事由、その他の不適格事由のある最判員候補者については、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、不選任の決定をします(裁判員法34条4項)。

⑥ 検察官と被告人は、裁判員候補者について、4人を限度とし(裁判官1人と裁判員4人の合議体で審理する旨の決定(裁判員法2条3項)があった場合は3人を限度とし)、理由を示さずに不選任の決定の請求をすることができます(裁判員法36条1項)。

 検察官と被告人から理由を示さない不選任の請求があったときは、裁判所は、不選任の決定をします(裁判員法36条3項)。

裁判員の選任手続における被害者特定事項の秘匿のルール

 裁判において、被害者や事件関係者のプライバシー保護のため、裁判官は、被害者等の人の氏名、住所などの人定事項を裁判で明らかにしない決定(例えば、裁判の傍聴人に被害者の氏名、住所が知られないように呼称で呼ぶなどする)がなされることがあります(刑訴法法290条の2)。

 これを被害者特定事項の秘匿決定といいます。

 裁判員裁判において、被害者特定事項の秘匿決定があった場合、裁判官・検察官・被告人・弁護人は、裁判員選任手続において、裁判員候補者に対し、正当な理由がなく、被害者特定事項を明らかにしてはいけません(裁判員法33条の2第1項)。

 被害者特定事項の秘匿決定があった事件の裁判員選任手続において、裁判員候補者に対し、被害者特定事項が明らかにされた場合は、裁判長は、裁判員候補者に対し、被害者特定事項を公にしてはならない旨を告知します(裁判員法33条の2第2項)。

 告知を受けた裁判員候補者又は裁判員候補者であった人は、裁判員選任手続において知った被害者特定事項を公にしてはならないという義務を負います(裁判員法33条の2第2項)。

次回の記事に続く

 次回の記事では、「裁判員裁判の法手続」「区分審理」を説明します。

刑事訴訟法(公判)の記事まとめ一覧