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【脳の未来予測②】「先読み」と「恐れ読み」は区別しなければならない

「先読み」と「恐れ読み」

 人間の脳が未来を予測するときの式は、

  過去+現在=未来

です。

 人間の脳は、過去の経験と現在の状況を基に、絶えず未来を思考します。

 人間の脳のこの未来を予測する能力は、「先読み」と「恐れ読み」に区別できます。

 「先読み」は、過去と現在から未来を予測することです。

 「恐れ読み」は、人間に備わっているネガティブ本能の力により、恐怖や不安を感じる出来事を予測することです。

 過去と現在から未来を予測する「先読み」と、ネガティブ本能から不安や恐怖を感じる出来事を予測する「恐れ読み」は、両方とも人間の脳の未来を予測する能力です。

 しかし、「先読み」と「恐れ読み」では、もたらす効果が違います。

 「先読み」は、未来を予測し、未来をコントロールしやすくするメリットをもたらします。

 しかし、「恐れ読み」は、不必要に恐怖や不安を増幅させ、合理的な判断をできなくさせるデメリットをもたらします。

 「恐れ読み」をしてしまっている場合は、意識的に「先読み」に切り替えなければなりません。

 自分の脳が未来を予測するときに、「先読み」をしているのか、それとも「恐れ読み」をしているのかに自覚的になる必要があります。

なぜ「恐れ読み」をしてしまうのか?

 人の脳は、起こってもいない不安や恐怖を想像するように設計されています。

 ネガティブ本能をもっているということです。

 狩猟採取時代の人類にとっては、ネガティブである方が(危険を予期できる方が)、ライオンなどの外敵に遭遇して襲われる確率を下げることができ、結果、生き残って子孫を残すことができました。

 私たちは、そのような先人たちの子孫なので、ネガティブ本能を引き継いでいます。

 このネガティブ本能により、脳が勝手に「恐れ読み」を実行します。

 脳が「恐れ読み」をする理由は2つあります。

「恐れ読み」をする理由① 慎重な行動をとらせるため

 理由の1つ目は、慎重な行動をとらせるためです。

 がむしゃらに前に進むだけでは、地雷を踏んで命が危険にさらされることを脳は知っているのです。

「恐れ読み」をする理由② 事が起こったときの精神的苦痛を減らすため

 悪い出来事が起こったことをシュミレーションしておくことで、精神的苦痛を減らすことができます。

 脳が「恐れ読み」をするもう一つの理由は、自分の心を守るための免疫を作っておくためです。

【実験例】先読みできると精神的苦痛を減らすことがきる

 実験例を紹介します。

【実験内容】

①強い電気ショックを20回与えるグループ(高ショックグループ)

と、

② 強い電気ショック3回と弱い電気ショック17回を与えるグループ(低ショックグループ)

に分け、それぞれ電気ショックを与える。

 電気ショックを与えたときの、心拍数、発汗量、自己評価による恐ろしさの度合いを調査する。

【結果】

 ② の低ショックグループの方が、心拍は速く、発汗量は多く、自己評価による恐ろしさの度合いが高かった。

 

 低ショックグループは、強さの異なるショックを受けたせいで、未来を予測できなかったため、高ショックグループよりも精神的苦痛が大きくなったということです。

(先読みできない苦痛3回は、先読みできる苦痛20回より痛い)

 苦痛を先読みしておくことで、精神的ダメージを軽減できることを証明した実験です。

まとめ

 過去と現在の情報から、客観的に未来を予測する「先読み」は、有益性があるので、推奨できます。

 しかし、不安や恐怖を予測する「恐れ読み」は推奨できません。

 「恐れ読み」の本質が、自分を怖がらせるために行うものだからです。

 「恐れ読み」をしていることに気づいたら、「先読み」に思考を切りかえる必要があります。

 そのためにも、脳が行う未来予測は、

  • 「先読み」と「恐れ読み」の2つに区別できること
  • 自分が今「先読み」をしているのか、それとも「恐れ読み」をしているのかを意識できること

が大切です。

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