刑事訴訟法(公判)

公判の流れ㉑~「証拠調べに関する異議申立て」を説明

 前回の記事の続きです。

 公判手続は、冒頭手続→証拠調べ手続 →弁論手続→判決宣告の順序で行われます(詳しくは前の記事参照)。

 前回の記事では、証拠調べ手続のうち、

検察官、被告人又は弁護人が証拠調べ請求した証拠の裁判官への提出

を説明しました。

 今回の記事では、証拠調べ手続のうち、

証拠調べに関する異議申立て

を説明します。

証拠調べに関する異議申立て

 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調べに関して異議を申し立てることができます(刑訴法309条1項刑訴規則205条)。

 異議申立ての制度は、

  • 当事者(検察官、被告人又は弁護人)において、手続が公正に行われるように監視すること
  • 裁判所や相手方(検察官、被告人又は弁護人)に手続の違背があるときは、その違背を指摘して是正を求めること

により手続の適正と公正を維持・担保するものです。

 証拠調べに関する異議は、

  • 冒頭陳述
  • 証拠調べの請求
  • 証拠決定
  • 証拠調べの実施

など、証拠調べ全般にわたって申し立てることができます。

 証拠調べの異議申し立ては、相手方(検察官にとっての相手方は被告人・弁護人、被告人・弁護人にとっての相手方は検察官)の行為に対してのみならず、裁判所の行為に対してもすることができます。

証拠調べに関する異議申立ての例

 証拠調べの異議申し立てが行われる対象として、以下のものが挙げられます。

  • 証拠に基づかない冒頭陳述(刑訴法296条ただし書刑訴法規則198条2項)
  • 立証趣旨を明示しない証拠調べの請求(刑訴法規則189条1項)
  • 裁判所の違法な証拠決定(刑訴法規則190条1項)
  • 不適法・不相当な証拠書類の朗読、要旨告知、証拠物の展示(刑訴法305条306条307条刑訴法規則203条の2)
  • 不適法・不相当な方法による証人尋問(刑訴法295条刑訴法規則199条の13第2項)
  • 裁判官の尋問制限(刑訴法295条
  • 裁判官の尋問に対する介人権の行使(裁判官が検察官、弁護人の尋問を中止させ、自らその事項について尋問できる権利)(刑訴法規則201条1項)
  • 書面を示しての証人尋問することの裁判官の許可・不許可の判断(刑訴法規則199条の11)
  • 裁判官が公判準備の結果の証拠取調べをしないこと(刑訴法303条
  • 裁判官が証拠の証明力を争う機会を付与しないこと(刑訴法308条
  • 裁判官が証拠決定をする際に検察官、被告人・弁護人の意見の聴取をしないこと(刑訴法規則190条2項)

証拠調べに関する異議を申し立てるための理由(法令違反、不相当)

 証拠調べに関する異議申立ての理由は、

  • 法令違反
  • 不相当

のいずれかになります(刑訴法規則205条1項本文)。

 ただし、「裁判官の行った証拠調べに関する決定」に対しては、「法令違反」を理由とする異議申立てしかできません(刑訴法規則205条1項ただし書)。

 「裁判官の行った証拠調べに関する決定」とは、

が挙げられます。

証拠調べに関する異議を申立ては、直ちに行わなければならない

 証拠調べに関する異議申立ては、個々の行為・処分・決定ごとに、簡潔にその理由を示して、直ちに行わなければなりません(刑訴法規則205条の2)。

 時機に遅れてなされた異議申立ては、原則として却下されます(刑訴法規則205の4)。

証拠調べに関する異議を申立てに対し、裁判所は遅滞なく決定しなければならない

 検察官、被告人又は弁護人から、証拠調べに関する異議申立てがあった場合、裁判官は遅滞なく「決定」しなければなりません(刑訴法309条3項刑訴法規則205条の3)。

 「決定」の内容について説明します。

不適法である場合は「却下」

 異議申立てが不適法である場合は「却下」となります(刑訴法規則205条の4)。

 「却下」は、門前払いのイメージです。

 そもそも審査を開始する要件を満たしていないので、取り合わないというイメージです。

適法であるが理由がない場合は「棄却」

 異議申立てが適法であるが理由がない場合は「棄却」となります(刑訴法規則205条の5)。

 異議申立ての要件を満たしているので、その異議申立てを受理し、内容を検討したが、内容が妥当なものではなかったため、その異議を受け入れないというイメージです。

適法でしかも理由がある場合

 適法でしかも理由がある場合は、

異議申立ての内容となっている行為(異議を申し立てられた相手方の行為)の中止、撤回、取消し、変更を命ずる

など、その申立てに対応する決定が行われます(刑訴法規則205条の6)。

異議申立てに対する決定に対しては、不服申立ての方法がない

 証拠調べに関する異議申立てに対する裁判官の決定に対しては、不服申立ての方法が用意されていません(刑訴法420条1項)。

 なので、検察官、被告人又は弁護人は、証拠調べに関する異議申立てに対する裁判官の決定に対し、更に不服を申し立てることができず、その決定に従うというルールになっています。

 ただし、裁判官の決定に「憲法違反」、「判例違反」があれば、最高裁判所に対し、特別抗告を行うことができます(刑訴法433条)。

 また、証拠調べに関する異議申立てに対する裁判官の決定を「審理の手続違背」と捉え、「訴訟手続の法令違反」(刑訴法379条)を理由として上訴し、控訴審上告審で争うという方法を採ることができます。

同一事項について重ねて証拠調べに関する異議申立てはできない

 証拠調べに関する異議申立てに対する裁判官の決定があったときは、同一事項について重ねて異議を申し立てることはできません(刑訴法規則206条)。

 ちなみに、訴訟行為について、その行為が1回のみ許されていることを「一回性の原則」と呼びます。

次回の記事に続く

 次回の記事では、証拠調べ手続のうち、

被告人質問

を説明します。