刑法(公務執行妨害罪)

公務執行妨害罪(16) ~「公務執行妨害罪における暴行の意義(暴行は公務員に向けられる必要はない)」を解説~

公務執行妨害罪における「暴行」の意義

 公務執行妨害罪(刑法95条第1項)にいう暴行は、

公務員に向けられた不法な有形力の行使であり、直接に公務員の身体に対して加えられる必要はなく、直接には物に対して加えられた有形力の行使であっても、それが公務員に向けられたものであればよい

とされます。

(なお、暴行罪(刑法208条)における暴行は、不法な有形力の行使が人に向けられている必要がありますが、公務執行妨害罪の暴行は、不法な有形力の行使が公務員に向けられている必要がない点が違いとしてあります)

 参考となる判例として、以下のものがあります。

最高裁判決(昭和26年3月20日)

 この判決で、裁判官は、

  • 公務員の職務の執行に当たり、その執行を妨害するに足る暴行を加えるものである以上、それが直接公務員の身体に対するものであると否とは問うところではない
  • 被告人はC事務官らが適法な令状により押収した煙草を、街路上に投げ捨ててその公務の執行を不能ならしめたというのであるから、その暴行は間接には同事務官らに対するものといい得る

と判示しました。

最高裁決定(昭和34年8月27日)

 この判決で、裁判官は、

  • 刑法95条1項の公務執行妨害罪が成立するには、いやしくも公務員の職務の執行に当たりその執行を妨害するに足る暴行を加えるものである以上、それが直接公務員の身体に対するものであると否とは問うところでない
  • 被告人は、司法巡査が覚せい剤取締法違反の現行犯人を逮捕する場合、逮捕の現場で証拠物として適法に差押えた上、整理のため同所に置いた覚せい剤注射液入りアンプル30本を足で踏み付け、うち21本を損壊してその公務の執行を妨害したというのであるから、右被告人の所為は、右司法巡査の職務の執行中その執行を妨害するに足る暴行を加えたものであり、そしてその暴行は、間接に同司法巡査に対するものというべきである
  • されば、かかる被告人の暴行を刑法95条1項の公務執行妨害罪に問擬した原判決は正当である

と判示しました。

最高裁判決(昭和37年1月23日)

 この判決で、裁判官は、

  • 刑法95条にいわゆる暴行とは公務員の身体に対し、直接であると間接であるとを問わず不法な攻撃を加えることをいう

と判示しました。

公務員における間接暴行に限定条件はない

 人に向けられてはいるが直接人の身体に対して加えられたのではない暴行のことを「間接暴行」といいます。

 間接暴行については、どの範囲のものが公務執行妨害罪にいう「暴行」に該当するかについて、最高裁は限定を付しておらず、「公務員の職務の執行に当たりその執行を妨害するに足る暴行を加えるものである以上、それが直接公務員の身体に対するものであると否とは間うところではない」としています(上記最高裁判決 昭和26年3月20日最高裁決定 昭和34年8月27日)。

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