刑法(強盗罪)

強盗罪(15) ~「強盗罪の故意」を判例で解説~

強盗罪の故意

 強盗罪などの故意犯については、犯罪を犯す意思(故意)がなければ、犯罪は成立しません(詳しくは前の記事参照)。

 強盗罪においては、

暴行・脅迫を加えて相手方の反抗を抑圧し、その財物を奪取することの表象・認識

が強盗罪の故意として必要となります。

 強盗罪の故意を認めるに当たり、財物の種類・数量について、個別的に認識している必要はありません(大審院判決 大正15年2月27日)。

強盗の目的外の財物に対しても強盗の故意が認められる

 犯人が目的としていなかった財物が強取されていたとしても、目的外の財物に対しても強盗の故意が認められ、その財物を含めて、全ての財物について強盗罪が成立します。

 この点について、以下の判例があります。

大審院判決(大正2年10月21日)

 この判例で、裁判官は、

  • 財物奪取の意思をもって暴行を為し、よって人を死に致し、財物を奪取した以上は、その財物中に当初奪取の目的と為さざりしものを包含するも、財物につき、強盗罪の成立を妨げるものにあらず

と判示しました。

暴行・脅迫についての表象・認識があれば足り、相手の反抗を抑圧する程度のものであることまで認識する必要はない

 強盗罪の故意を認めるに当たり、暴行・脅迫についての表象・認識があれば足り、暴行・脅迫が相手の反抗を抑圧する程度のものであることまで認識する必要はないと解されます。

 行為者が相手の反抗を抑圧し得ると予見する必要があると解すると、現実の暴行・脅迫を基準として故意の成否を決することができなくなり、行為者によって強盗の故意があったりなかったりするという結果になります。

 判例も、「その暴行又は脅迫が、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足る程度のものであるかどうかという客観的基準によって決せられる」(最高裁判決 昭和24年2月8日)と判示していることから、強盗の故意を認定するに当たり、行為者が、暴行・脅迫が被害者の反抗を抑圧するに足る程度であることまでを認識していることを要求しているとは解されません。

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