刑法(強盗罪)

強盗罪(34) ~他罪との関係⑦「強盗罪と恐喝罪との関係」を判例で解説~

強盗罪と恐喝罪との関係

 強盗罪(刑法236条)と恐喝罪(刑法249条)との関係について説明します。

 恐喝罪と強盗罪の犯罪の成否で問題となるのは、恐喝に引き続き、同じ被害者に対して強盗が行われた場合です。

 判例は、恐喝に引き続き、同じ被害者に対して強盗が行われた場合には、恐喝罪と強盗罪を包括して、刑が重い強盗罪の一罪の成立を認めるとしています。

 恐喝と強盗との違いが、暴行・脅迫が反抗抑圧の程度に達するか否かの点にあることを考えれば、強盗罪の一罪をもって論ずれば足りるといえます。

 参考となる判例は、以下の判例です。

東京高裁判決(昭和34年8月27日)

 この判例は、たばこの恐喝に続いて、金銭を強取して被害者にけがをさせた強盗傷人罪の事案で、恐喝罪と強盗傷人罪を包括して、刑が重い強盗傷人罪の一罪の成立を認めるとしました。

 裁判官は、

  • 真実は、まずたばこ、次に金銭とそれぞれ異る場所、機会において被害を受けたものと認めることができるうえ、たばこについては、単にこれを恐喝したにとどまると認められるが、金銭については、その際、被害者に加えた暴行の時刻、場所、方法、程度等からみて、すでに恐喝の域を超え、被害者の反抗を抑圧して、これを強取したものと認めざるを得ない
  • 弁護人は、原判決が恐喝ならびに強盗の事実を認定しながら、これに対し刑法240条のみを適用したことについて、理由のくいちがいがあると主張するけれども、本件の恐喝ならびに強盗傷人の二罪は、順次、相接続する機会になされたもので、当初の暴行による恐喝が、やがて次の段階にその程度を超えて強盗に発展したもので、相手方に暴行を加えて畏怖させて金品を取るという点において、両者共通の要素を含むものであるから、原判決が法律の適用において、これを包括して重い強盗傷人の一罪として取り扱ったとしても、必ずしも失当とは言えない

と判示しました。

福岡高裁那覇支部判決(昭和55年5月25日)

 この判例は、恐喝罪自体は成立しておらず、恐喝のための暴行・脅迫が行われた後に、さらに犯意が強盗罪に進んで、反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫が引き続き行われた場合は、強盗一罪が成立するにすぎないとしました。

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