刑事訴訟法(公判)

裁判③~「裁判の成立後は、裁判の内容を取消し・変更することができなくなる」「裁判の内容の訂正(更正決定)」を説明

 前回の記事の続きです。

裁判の成立後は、裁判の内容を取消し・変更することができなくなる

 裁判は、裁判機関の意思表示なので、まず裁判機関の内部で内容が決定され、次いで外部に対して告知されます。

 裁判機関の内部で裁判の内容が決定されることを「裁判の内部的成立」といいます。

 次いで外部に対して裁判の内容が告知されることを「裁判の外部的成立」といいます。

 裁判の内容は、外部的成立に至るまでいつでも変更可能です。

 しかし、外部的成立後は拘束力が生じ、特別の規定(刑訴法415条416条417条423条2項)がある場合を除き、裁判の内容を告知した裁判機関は、裁判の内容を取消し・変更することができなくなります。

裁判の内容の訂正(更正決定)

 刑事事件において、裁判の告知後であっても、一見明白な誤記が発見された場合は、明文の規定はありませんが、民事訴訟法257条1項に準じて、更正決定が許されるものと解されています。

 この点を判示した以下の裁判例があります。

札幌高裁判決(昭和28年11月26日)

 裁判官は、

  • 原判決が被告人を懲役4年に処し、その直後、右判決中、明白なる誤謬があるとして、原審は、判決主文中「被告人を懲役4年に処する。」とあるのを、「被告人を懲役4月に処する。」と更正決定をしたことは記録上明らかである
  • 右決定の理由は、原裁判所は被告人を懲役4月に処すべきものと判断したが、判決時にこれを4年と書き損じたから更正する趣旨と解せられる
  • かかる更正決定をなし得ることを明らかにした規定は刑事訴訟法には存しない
  • 思うに判決書に書き損じがあるときは裁判所の真意とその表示が一致しないのであるが、その前後の記載や判決書全体の趣旨、あるいは記録に徴して、その書き損じであることが判明すると共に裁判所の真意を読み取ることができる場合があり、かかる場合には判決の趣旨内容は、更正を待つまでもなく、その正しきところに従って理解さるべきはもちろんである
  • この場合の更正決定は、念のために真意を明かにするものにほかならず、裁判の内容を変更するものではない
  • 従って、法規の明文はないが、かかる場合の更正決定は許されるものと解し得るであろう
  • しかし、主文の刑の記載については考慮を要するものがある
  • すなわち、判決書の理由中の適条の記載により、右適条の法定刑をもって処断する裁判所の真意は判明するが、その法定刑の範囲内における量刑は裁判所の裁量に属することであるから、量刑に対する裁判所の真意は主文の記載によるのほかこれを読み取る手がかりはないわけである(この点は民事判決と事情を異にする。)。
  • 原判決の理由中には、被告人を懲役4月に処すべきものとする旨の記載がないのであるが、仮にこれがあっても理由の記載と主文の記載といずれが裁判所の真意に合致するのか、およその見当はつくにしても、確実に読みとることはできない
  • かく考えると、刑の量定に関しては主文の記載をもって裁判所の真意なりと解するほかはないのであって、従ってその記載を改めることは、判決の内容を変更する結果となるから、かかる更正決定は違法である
  • よって、原裁判所のなした更正決定は無効と解すべく、原判決は被告人を懲役4年に処したものとなさねばならない

と判示しました。

次回の記事に続く

 次回の記事では、

  • 裁判は確定によって効力を生じる
  • 確定判決の既判力、一事不再理の原則
  • 裁判確定の効力が排除される場合

などを説明します。

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