刑事訴訟法(公判)

被告人とは?② ~「被告人の権利と義務」「黙秘権(供述拒否権)」を説明

 前回の記事の続きです。

被告人の権利と義務

 被告人は、検察官と対等な地位で裁判を戦うので、様々な権利が認められています。

裁判の手続面において被告人に認められている権利

 裁判の手続面において被告人に認められている権利として、

があります。

被告人が審理に関わることができる権利

 被告人が審理に関わることができる権利として、

があります。

被告人が防御権を行使するための権利

 被告人が防御権を行使できるようにするための権利として、

があります。

 黙秘権について、以下で詳しく説明します。

黙秘権(供述拒否権)とは?

 黙秘権(「供述拒否権」ともいう)とは、

  • 取調べにおいて、検察官や警察官からの問いかけに対し、黙っていることができる権利
  • 裁判において、裁判官や検察官の問いかけに対し、黙っていることができる権利

です(憲法38条1項刑訴法198条2項311条1項)。

 被告人には黙秘権が与えられていることから、裁判官は、裁判の最初に、被告人に対し、終始沈黙し、個々の質間に対し陳述を拒むことができること、及び陳述をすれば被告人の不利益な証拠ともなるべきことを告知しなけばらなないことが刑訴法291条4項、刑訴法規則197条1項で定められています。

被告人の氏名に黙秘権はない

 被告人の氏名は、不利益な事項ということはできないので、氏名についての黙秘権はありません(最高裁判決 昭和32年2月20日)。

 なので、裁判官が裁判の最初に被告人の人定確認のため、被告人の氏名を聞いた場合、被告人は黙秘権を行使できません。

被告人が黙秘することを不利益に評価することはできないが、反省していないとして重く処罰されることはある

 黙秘権は被告人の憲法上のの権利なので、被告人が黙秘していることを刑の重さを決める上で被告人に不利益に考慮することは許されません(東京高裁判決 昭和28年12月14日)。

 ただし、合理的理由がないのに犯行を否定している被告人が、犯行を自自して反省している者よりも重く処罰されるのは、刑の目的上当然のことであるとされます(高松高裁判決 昭和25年5月3日)。

黙秘権は嘘を言ってよい権利ではない

 黙秘権は、黙っていることができる権利であり、嘘を言ってよいという権利ではありません。

 なので、被告人が裁判でで虚偽の事実を述べて、他人の名誉を毀損した場合は、防御権の濫用となり、名誉毀損罪が成立します(最高裁判決 昭和27年3月7日)。

 また、被告人が裁判で証言する者(証人)を教唆して虚偽の証言をさせることは、防御権の範囲を逸脱するものであり、偽証教唆罪が成立します(最高裁判決 昭和28年10月19日)。

被告人に課せられる義務

 被告人には、上記の権利が与えられている反面、以下のような義務が課せられています。

① 裁判所への出頭義務

 被告人は、裁判を受けるため、裁判所の召喚に応じて裁判所に出頭すべき義務(出頭義務)が課せられていいます。

 例えば、身柄不拘束(逮捕・勾留されていない)の被告人が、正当な理由なく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるときは、被告人は勾引(被告人に手錠をかけて身体を拘束し、強制的に出廷させる手続き)されます(刑訴法58条2項)。

 また、保釈中又は勾留執行停止中(勾留が一時的に停止され釈放されている状態)の被告人が正当な理由がなく裁判所に出頭しないときは、保釈又は勾留の執行停止が取り消され、身体が再び拘束されます(刑訴法96条1項1号刑訴法規則179の3)。

 勾留中の被告人が、正当な理由なく出頭を拒否し、刑事施設職員が被告人を裁判所に連れて行くことを著しく困難にしたときは、被告人不在のままで、その期日の公判手続を行うことができます(刑訴法286の2条)。

② 在廷義務

 被告人は、裁判を受けるため、裁判所に出頭した場合は、裁判長の許可がなければ、退廷することができません。

 言い換えると、被告人には、在廷義務が課せられています(刑訴法288条1項)。

 もし被告人か裁判長の許可を受けないで退廷したときは、裁判長は被告人不在のままで、被告人の陳述を聴かないで判決をすることができます(刑訴法341条)。

③ 法廷秩序維持義務

 被告人は、法廷の秩序を維持すべき義務(法廷秩序維持義務)を負います。

 もし、法廷秩序維持義務に違反したときは、裁判長は、法廷警察権に基づき、被告人に対し、発現の禁止、着席、退廷など、法廷の秩序を持するために必要な処分をすることができます(刑訴法288条2項)。

 被告人が暴力を振るい、又は逃亡を企てた場合には、被告人の身体を拘束したり、被告人に看守を付ける措置が採られることがあります(刑訴法287条)。

④ 適正で迅速な裁判を実現させる義務

 被告人は、適正・迅速な裁判を実現させるため、

  • 訴訟上の権利は、誠実にこれを行使し、濫用してはならないこと(刑訴法規則1条2項)
  • 公判期日を厳守し、審理に支障を来さないようにしなければならないこと(刑訴法281の6条2項
  • 第一回の公判期日前に、できる限り証拠の収集及び整理をし、審理が迅速に行われるように準備しなければならないこと(刑訴法規則178の2条)
  • 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の取調べを請求した場合、これらの者を期日に出頭させるように努めなければならないこと(刑訴法規則191の2条)

といった義務を負っています。