刑法(横領罪)

横領罪(38) ~横領罪における実行行為④「2項横領の実行行為」を判例で解説~

2項横領の実行行為

 横領罪(刑法第252条第1項・第2項)の第2項の罪の客体は、公務所から保管を命ぜられた自己の物であるから、その領得行為は、保管命令の趣旨に反するものでなければなりません(2項横領については前の記事参照)。

 領得行為が保管命令の趣旨に反するようなものである限り、第1項の横領行為の他人の物の場合と同様、法律上の処分であるか、事実上の処分であるかは問われません。

 第2項の横領行為の事例として、次の判例があります。

大審院判決(昭和14年7月28日)

 店舗や倉庫内の商品に、仮差押の執行を受けて公示書が貼付された上で、債務者の妻が保管を命ぜられていたところ、夫婦で共謀して売却の目的で取り出すことは横領に当たるとしました。

名古屋高裁判決(昭和31年10月30日)

 執行吏により工場内の織機等について処分禁止の仮処分がなされ、所有者が各物件の保管を命じられていたところ、所有者の長男が無断で仮処分の公示書を剥離損壊しても、仮処分及びこれに基づく保管命令の効力は適法に存続するから、その後、所有者がほしいままに各物件を標示の個所から自己の物であるとして所有者方の住居に搬出した行為は横領罪を構成するとしました。

福岡地裁判決(昭和34年3月24日)

 国税滞納処分として収税官吏より差押えを受け、保管を命ぜられた工場の発電機等を代物弁済として引き渡したり、担保として差し入れる行為を横領と認定しました。

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