横領罪の罪数の判断基準
など、いずれを要素とするかについて、見解が分かれています。
横領罪の罪数については、個別の事案ごとに、事件の特徴に応じて判断がなされるというのが実態のようです。
罪数の基準に関して判示した判例として、以下のものがあります。
大審院判決(明治45年3月28日)、大審院判決(大正3年12月22日)
これらの判例は、
- 共有物の横領で侵害されるのは、共有持分ではなく、共有される一個の所有権であり、その行為は一個の行為で一つの罪名に当たる
と判示し、横領被害者の所有権を罪数の基準とし、横領行為により1個の所有権を侵害すれば、1個の横領罪が成立する見解を示しました。
大審院判決(大正5年10月7日)
この判例は、
- 横領罪は、占有者が寄託関係の本旨に背き、その寄託関係を変更することを成立上の要素とするだけでなく、刑法252条2項は、所有権の侵害を包含しないのであるから、寄託関係を標準として、一個の行為により数個の寄託関係を犯す場合には、観念的競合となるが、包括的に単一である寄託関係を侵害する場合には、所有者が多数であっても単純一罪となる
と判示しました。
東京高裁判決(平成23年9月21日)
この判例は、
としました。