刑法(詐欺罪)

詐欺罪㉛ ~「八百長レースに関する詐欺」を判例で解説~

八百長レースに関する詐欺

 詐欺罪(刑法246条)について、八百長レースに関する詐欺の判例を紹介します。

最高裁判決(昭和29年10月22日)

 競輪選手が他の選手又は第三者と通謀して、実力でない競技をするいわゆる八百長レースにより、賞金及び払戻金を受領する行為は、詐欺罪を構成するとしました。

 裁判官は、

  • 本件の如く、競輪選手が他の選手(又は第三者)と通謀して実力に非ざる競技をなすいわゆる八百長レースにより賞金及び払戻金を受領する行為は、刑法の詐欺罪を構成する
  • 詐欺の実行の着手は、八百長レースを通謀した選手らがスタートラインに立った時であり、その既遂時期は通謀者が賞金、払戻金を請求しこれを受領した時と解する
  • また、詐欺の被欺罔者は、競輪施行者及びその実施を担当する自転車振興会の各係員ら(本件では賞金支払係岐阜市主事及び岐阜県自転車振興会の審判員、管理部員ら)であり、その錯誤の内容は、右係員らがそれぞれ本件八百長レースを公正なレースの如く誤信したことである
  • 詐欺の被害者は、賞金が施行者の財源(賞典費の項目)から支出されること及び払戻金は車券購買代金から支出されるけれども、右購買代金は車券発売と同時に施行者に帰属する事実に鑑み、施行者たる岐阜市であると解すべきものである

と判示し、八百長レースに対して詐欺罪の成立を認めました。

大阪地裁判決(昭和46年3月30日)

 競輪レースの払戻金を詐取するため、被告人が、競輪選手Aに対して、Aの出走するレースにおいて、出走の際、1、2着予想者を被告人に教示した上、その予想者を順当に入着させるため、他選手の走行を妨害してくれるよう依頼し、Aがこれに応じた事案で、裁判官は、

  • このような一人八百長の場合には、他の選手の走行を妨害する等の行為と意図する結果との間に因果関係の証明がなされない以上、このような行為は、詐欺罪の実行行為と評価することはできない

と判示し、詐欺罪は成立しないとしました。

 この判決は、前記の最高裁判例のように、複数の選手による典型的な八百長レースと異なり、一人八百長の場合には、妨害行為とレースの結果との間に多くの偶然的な要因が介在しているため、仮に選手Aの意図通りの結果が実現したとしても、それが選手Aの妨害行為以外の原因によって生じたものでないと断定するに足りる証拠が存在しないことを強調し、詐欺罪は成立しないと判示しています。

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