前回記事の続きです。
詐取額から利息などが天引きされた場合でも、詐取額全額について詐欺罪が成立する
人を欺く手段によって金員を借用したが、その際、利息費用などが天引きされた場合、詐取額は、現実に受領した金額か、それとも利息費用などを天引きした金額になるかが疑問になります。
この疑問に対する判例の答えは、利息費用などが天引きされた場合でも、その詐取金額は、利息費用天引き後の手取金額ではなく、利息費用天引き前の金額全額であるとしています。
判例は以下のとおりです。
大審院判決(大正13年5月27日)
この判例で、裁判官は、
と判示し、金銭消費貸借の成立が詐欺によるときには、利息費用などが天引きされた場合でも、その詐取金額は、手取り金額ではなく、消費貸借の契約金全額であるとしました。
後に詐取金品を返還したとしても、詐取額全額について詐欺罪が成立する
後から詐取金品を被害者に返還したとしても、詐取額全額について詐欺罪が成立します。
この点について、以下の判例があります。
大審院判決(昭和11年1月28日)
この判例で、裁判官は、
と判示し、後に詐取金品を被害者に返したとしても、詐取額全額について詐欺の既遂罪が成立するとしました。
詐取金の一部を従前の貸付金の弁済に充てた場合でも、詐取額全額について詐欺罪が成立する
人を欺いて金銭の貸付けを承諾させ、その交付を受けるに当たって、その一部について現金授受の手続を省略して、従前の貸付金の弁済に充て、現金の交付を受けた場合、詐取金額は、現実に交付を受けた残金額ではなく、貸借金全額であるとされます。
この点について、以下の判例があります。
この判例で、裁判官は、
- A無尽株式会社において、同会社係員から、無尽落札金として13万917円50銭の交付を受けるに当たって、たとえ、その一部につき現金授受の手続を省略し、これをただちに同会社に対する従前の借受金等の支払にあてたとしても、その金額を控除しない全額について、刑法246条1項の詐欺罪が成立するものと解すべきである
と判示しました。
次回記事に続く
次回記事では、
- 詐欺犯人の要求額が交付額を超えた場合でも、交付額全額について詐欺罪が成立する
- 詐取額全額について詐欺罪が成立するとした判例
について解説します。