刑法(詐欺罪)

詐欺罪㊵ ~「口座開設詐欺」「ローンカード詐取」「他人を搭乗させる目的での航空券詐取」「他人への譲渡目的での携帯電話機詐取」を判例で解説~

 詐欺罪(刑法246条)について、知識としておさえておきたい判例を紹介します。

他人になりすましての口座開設詐欺

最高裁決定(平成14年10月21日)

 他人になりすまして預金口座を開設し、銀行窓口係員から預金通帳等の交付を受けた行為につき、詐欺罪の成立を認めました。

 裁判官は、

  • 預金通帳は、それ自体として所得権の対象となり得るものであるにとどまらず、これを利用して預金の預入れ、払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから、他人名義で預金口座を開設し、それに伴って銀行から交付される場合であっても、詐欺罪が成立する

と判示しました。

第三者への譲渡目的での口座開設詐欺

最高裁決定(平成19年7月17日)

 第三者に譲渡する預金通帳とキャッシュカードを入手する目的で、口座を開設した事案で、裁判官は、

  • 預金契約に関する権利、通帳等の第三者への譲渡等を禁止する預金約款の下では、預金口座の開設、預金通帳及びキャッシュカードの交付を銀行員に申し込むことは、これを自分自身で利用する意思を表しているといえるから、預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図を秘して上記申込みを行う行為は、人を欺く行為に当たり、これにより通帳等の交付を受ける行為は詐欺罪を構成する

と判示しました。

他人になりすましてのローンカード詐取

最高裁決定(平成14年2月8日)

 他人になりすまし、消費者金融会社からローンカードの交付を受けた上、そのローンカードを利用して、その会社のATM機から現金を引き出した行為について、裁判官は、

  • 被告人は、無人契約機コーナーに設置された無人契約機を介して、不正に入手した他人名義の自動車運転免許証により氏名等を偽るなどして、M市内の会社にいる係員を欺き、他人名義で同社とカードローンに関する基本契約を締結した上,同係員からローンカードの交付を受け、その約5分後に、同カードを同無人契約機コーナー内に設置された現金自動入出機に挿入し、同機を操作して作動させ、同機から現金20万円を引き出した
  • 上記のようなカードローン契約の法的性質、ローンカードの利用方法、機能及び財物性などにかんがみると、同社係員を欺いて同カードを交付させる行為と、同カードを利用して現金自動入出機から現金を引き出す行為は、社会通念上別個の行為類型に属するものであるというべきである
  • 上記基本契約の締結及びローンカードの交付を担当した同社係員は、これらの行為により、上記無人契約機コーナー内に設置された現金自動入出機内の現金を被告人に対して交付するという処分行為をしたものとは認められない
  • 被告人は、上記のような機能を持つ重要な財物である同カードの交付を受けた上、同カードを現金自動入出機に挿入し、自ら同機を操作し作動させて現金を引き出したものと認められる
  • したがって、被告人に対し、同社係員を欺いて同カードを交付させた点につき詐欺罪の成立を認めるとともに、同カードを利用して現金自動入出機から現金を引き出した点につき窃盗罪の成立を認めた原判決の判断は、正当である

であると判示し、ローンカードの交付を受けた点について詐欺罪、ローンカードでATM機から現金を引き出した点について窃盗罪が成立するとしました。

他人を搭乗させる目的での航空券詐取

最高裁決定(平成22年7月29日)

 搭乗券の交付を請求する者自身が、自ら航空機に搭乗するか否かは、航空機の運航の安全、到着国への不法入国の防止等の観点から、航空会社係員が搭乗券交付の可否を決する際の重要な事項であるから、交付された搭乗券によって他者を搭乗させる意図を秘して搭乗券の交付を請求する行為は、詐欺罪にいう人を欺く行為に当たり、詐欺罪を構成するとしました。

 事案は、中国人をカナダに不法入国させるため、自己に対する飛行機の搭乗券を他の者に渡す意図を秘して、搭乗券の交付を受けたというものです。

 裁判官は、

  • 搭乗券の交付を請求する者自身が航空機に搭乗するかどうかは、本件係員らにおいてその交付の判断の基礎となる重要な事項であるというべきであるから、自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘して、本件係員らに対してその搭乗券の交付を請求する行為は、詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず、これによりその交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成することは明らかである

と判示し、詐欺罪の成立を認めました。

他人への譲渡目的での携帯電話機詐取

東京高裁判決(平成24年12月13日)

 第三者に無断譲渡する意図を秘してプリペイド式携帯電話機(携帯電話)の購入を申し込む行為は、その行為自体が、交付される携帯電話機を自ら利用するように装うものとして欺罔行為に当たり、詐欺罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 携帯電話不正利用防止法が、プリペイド式携帯電話を含めた携帯電話機の不正利用の防止等を図るため、携帯電話機を購入した契約者に対し、当該携帯電話機を親族等以外の第三者に譲渡する場合には、あらかじめ携帯音声通信事業者の承諾を得ることを義務づけ、この承諾を得ないで親族等以外の第三者に携帯電話機を譲渡する行為を禁止していること

を理由に挙げ、詐欺罪の成立を認めました。

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