刑法(殺人罪)

殺人罪(1) ~「殺人罪の行為」「主体(犯人)」「客体(被害者)」「保護法益」を解説~

 これから複数回にわたり、殺人罪(刑法199条)を説明します。

殺人罪の行為

 殺人罪の行為は、

  • 人を殺すこと…

 具体的に言うと

  • 故意に、その行為がなければ存続したであろう人の生命を断つこと

です。

 人の生命を断つ手段・方法に制限はありません。

 射殺、刺殺、撲殺絞殺、毒殺、焼殺、轢殺、溺死させる、墜落死させる、餓死させる、凍死させるなど、人の死亡を起こす足る手段・方法であれば殺人罪は成立します。

 さらに、上記のような有形的な手段・方法に限らず、無形的な手段・方法(例えば、被害者に急激に強度の精神的衝撃を与えてショック死させる)といった場合も含まれるとされます。

主体(犯人)

 殺人罪の主体(犯人)に限定はありません。

 自然人(人)であれば、殺人罪の主体になります。

 法人は、殺人罪の主体になりません。

客体(被害者)

 殺人罪の客体(被害者)は「人」です。 

 ここでいう「人」は、出生後、死亡にいたるまでの、生命ある自然人すべてを含みます。

 なので、

  • 早産のため発育不良で将来生長の希望がない嬰児
  • 仮死状態の嬰児
  • 適法な人工妊娠中絶の結果分娩された嬰児
  • 瀕死の傷病者
  • 余命わずかの老人
  • 失踪宣告を受けた者

であっても、これらの者を殺害すれば、殺人罪が成立します。

 なお、人の出生とは、身体の一部が母体から一部でも露出された時(一部露出説)をいいます(詳しくは前の記事参照)。

 なので、赤ん坊の身体が母体から一部でも露出された段階で、その赤ん坊は殺人罪の客体となります。

保護法益

 殺人罪の保護法益は、

人の生命

です。

次の記事

①殺人罪、②殺人予備罪、③自殺教唆罪・自殺幇助罪・嘱託殺人罪・承諾殺人罪の記事まとめ一覧