刑法(総論)

刑罰(8)~「刑罰の適用(「法定刑」→「処断刑」→「宣告刑」)」を説明

 前回の記事の続きです。

刑罰の適用(「法定刑」→「処断刑」→「宣告刑」)を説明

 犯罪が成立すると、国家の刑罰権が発生します。

 この刑罰権は、犯人が検察官により起訴され、裁判所の審理を経て、裁判所の判決により犯人に対して刑罰が言い渡されることで刑罰として具体化します。

 裁判所が刑罰を言い渡すことを「刑罰の適用」といいます。

 「刑罰」は、「法定刑」→「処断刑」→「宣告刑」という過程を経て裁判所により決定されます。

 具体的には、以下のようになります。

構成要件に対応して定められている各本条の刑罰(法定刑)があります。

 例えば、詐欺罪(刑法246条)の法定刑は、条文に記載されている「10年以下の拘禁刑」です。

② 裁判所による事件の審理の結果、一定の刑罰加重・減軽事由によって修正された刑罰(処断刑)に変化します。

 例えば、詐欺罪(刑法246条)を2つ犯した場合について、併合罪加重(刑法47条)がされた場合の処断刑は「15年以下の拘禁刑(10年十(10年÷2))」となります。

③ 最後に裁判所が、処断刑の範囲内で、被告人に与える適切な刑の重さを決め、具体的な刑罰(宣告刑)を言い渡します。

 例えば、上記②の例の場合に当てはめると、裁判所は、拘禁刑15年以下の範囲内で、犯人に科す刑罰の重さを決め、「拘禁刑3年」を犯人に言い渡した場合、その「拘禁刑3年」が宣告刑となります。

 以下で、法定刑、処断刑、宣告刑の具体的な定義を説明します。

法定刑とは?

 法定刑は、刑罰法規の各本条に犯罪構成要件に対応するものとして規定されている刑罰です。

処断刑とは?

 処断刑は、法定刑に加重・減軽の修正を加え、処断の範囲を画する刑罰です。

 法定刑にいくつかの刑種が定められ、その間に選択の余地があるときは、裁判官の裁量により、そのうち1種類の刑罰が選択され、さらに、これに一定の加重・減軽が施されて処断刑が得られます。

 例えば、窃盗罪(刑法235条)の法定刑は「10年以下の拘禁刑」又は「50万円以下罰金」です。

 裁判所は、「10年以下の拘禁刑」と「50万円以下罰金」のどちらかを選択し、これに一定の加重・減軽を施し処断刑とします。

宣告刑とは?

 宣告刑は、法定刑(刑の加重・減軽事由がある場合には法定刑を修正した処断刑)の範囲内で、裁判官が「刑の量定(刑の重さを決めること)」をして具体的に宣告する刑罰であり、言渡刑ともいいます。

 「刑の量定」は「量刑」ともいい、裁判官の自由裁量に任されています。

 刑の量定(量刑)は、

  • 犯人の性格・年齢・境遇
  • 犯罪の軽重・情状
  • 犯罪後の情況

などを考慮し(刑訴法248条)、客観的に妥当性のあるものが決定されます。

 不当な量刑は控訴理由となります(刑訴法381条)。

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