刑法(強盗罪)

強盗罪(29) ~他罪との関係②「強盗罪と公務執行妨害罪との関係」を判例で解説~

強盗罪と公務執行妨害罪との関係

 強盗罪(刑法236条)と公務執行妨害罪刑法95条)の関係について説明します。

 職務を執行する公務員に暴行・脅迫を加えれば、公務執行妨害罪が成立しますが、その暴行・脅迫が反抗を抑圧する程度に達し、しかも、その所持する財物を強取するときは、公務執行妨害罪と強盗罪の両罪が成立します。

 そして、両者は観念的競合になり、「公務執行妨害罪・強盗罪」の一罪が成立します。

 公務執行妨害罪が独立した一罪として成立し、次いで、強盗罪が独立した一罪として成立し、両罪が併合罪になるということはありません。 

 この点について、以下の判例があります。

大審院判決(大正6年4月2日)

 仮差押のために執達吏(執行官)が占有する金銭を奪取した事案で、裁判官は、

  • 執達吏が、仮差押のため、本件金銭を占有するや、被告ら共謀の上、暴行を為し、その場において、これを奪取したるは、すなわち強盗なると同時に、仮差押の手続を妨害したるものなること論を竢たず

と判示して、強盗罪と公務執行妨害罪が成立し、両者は観念的競合になるとしました。

大審院判決(明治43年2月15日)

 この判例は、窃盗犯人が、警察官の逮捕を免れるため、暴行を加えて創傷を負わせれば、公務執行妨害罪と強盗致傷罪とが成立し、両者は観念的競合となるとしました。

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