刑法(強盗罪)

強盗罪(18) ~「強盗罪における違法性阻却事由」「被害者の自力救済行為として強盗行為」を判例で解説~

強盗罪における違法性阻却事由

違法性阻却事由とは?

 犯罪は

  • 構成要件該当性
  • 違法性
  • 有責性

の3つの要件がそろったときに成立します。

 犯罪行為の疑いがある行為をしても、その行為に違法性がなければ犯罪は成立しません。

 この違法性がない事由、つまり違法性がないが故に犯罪が成立しないとする事由を「違法性阻却事由」といいます(詳しくは、前の記事参照)。

 今回は、強盗罪における違法性阻却事由として論点としてあがる

  • 自救行為(被害者の自力救済行為として強盗行為)

について説明します。

被害者の自力救済行為として強盗行為

 自救行為とは、

国家に頼らず、自らの力で自分の権利を守ること(自力救済すること)

をいいます。

 犯罪行為が自救行為と認められた場合、その犯罪の違法性が阻却され、犯罪は不成立となります。

 強盗罪において、正当権限者(強盗被害者)が、強盗の手段を用い、強盗犯人から自らの力で被害品を取り返した場合(自力救済した場合)に、強盗罪が成立するか否かが問題になります。

 結論として、強盗被害者が、強盗犯人から被害品を強奪した場合には、自力救済の範囲内では、強盗罪の成立する余地はなく、暴行罪、脅迫罪の成立の余地があるにとどまります。

 これは、被害品の関係では、他人の財物という要件が欠け、強盗罪が成立しませんが、被害者(この場合は強盗犯人)の身体・自由は、なお保護の法益たり得るからです。

 なお、自力救済の範囲を超えた場合、つまり、緊急性、補充性、相当性に欠ける強奪行為の場合には、強盗罪の成立があり得ます。

 第三者が、強盗犯人から被害品を強奪する場合にも、第三者による被害者のための自力救済といえる限り、暴行、脅迫のみが成立する余地があるにとどまります。

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