刑法(脅迫罪)

脅迫罪(6) ~「脅迫の対象となる『名誉』『財産』とは?」を判例で解説~

脅迫の対象となる「名誉」「財産」とは?

 脅迫罪は、刑法222条において、

  1. 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する
  2. 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする

と規定されています。

 条文に記載される「名誉」「財産」の内容と事例ついて、判例を示して説明します。

「名誉」に対する加害を脅迫の手段として用いたとして脅迫罪を認定した判例

 名誉に対する加害を脅迫の手段として用いたとして、脅迫罪を認定した事例として、以下の判例があります。

  • 姦通に関する事実を公表する旨を通告した事例(大審院判決 昭和5年7月11日)
  • 新聞記者が料理店経営者に対して、自己の意思に逆らうと料理店に関し不利益な事項を新聞紙に掲載すると告げた事例(大審院判決 昭和7年7月20日)
  • 被告人が、婦人に対し、その貞操に関する投書(虚無人名義)が新聞社に寄せられており、暗にその事実が新聞に掲載されるおそれがあるように申し向けた事例(大審院判決 昭和7年11月11日)
  • 市会の公金の分配に関する決定について、市会議長に対し再考を促すため、決議書と同議長の名前を記入した位牌を同議長の内縁の妻を介して交付したという事例(大審院判決 昭和8年11月20日)
  • 債務の一部につき弁済をし全部の請求を受けた債務者が減額を請求する手段として債権者に対して、名誉を毀損すべき意向を示して脅迫した事例(大審院判決 昭和10年3月2日)
  • 多数の復員者が、船医が職務怠慢であるとして、その診断を拒絶し、復員船に乗務させないことを要求する決議をするのは、船医の名誉に対する害悪の通告と認められるとした事例(大阪高裁判決 昭和25年10月10日)
  • 部落結束して冠婚葬祭等一切の交際を断ち、仲間外しにする(いわゆる村八分)と申し向けた事例(福岡高裁判決 昭和29年3月31日

「財産」に対する加害を脅迫の手段として用いたとして脅迫罪を認定した判例

 脅迫を受けた者自身の財産や、その親族の財産に対する加害を告知した場合は、財産に対する加害を告知したとして、脅迫罪が成立します。

 また。法人など他人の財産に対する加害でも、間接的に脅迫を受けた者自身の財産的損害につながるような加害告知になる場合は、恐喝罪が成立します。

 財産に対する加害を脅迫の手段として用いたとして脅迫罪を認定した事例として、以下の判例があります。

  • 家屋を焼損する旨を告知した事例(大審院判決 明示43年11月15日)
  • 抗争中の情勢下で、火事もないのに出火見舞いのハガキを送付した事例(最高裁判決 昭和35年3月18日

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