前回の記事の続きです。
前回の記事では、
- 公判前整理手続の始まり方、方法、出席者
- 公判前整理手続は、被告人に弁護人が付いていなければ行うことができない(必要的弁護)
について説明しました。
今回の記事では、
- 公判前整理手続で話し合われる事項
- 公判前整理手続中の被告人への意思確認のための質問
を説明します。
公判前整理手続で話し合われる事項
公判前整理手続の目的は、事件の争点や証拠の整理です。
公判前整理手続で話し合われる事項は、刑訴法316条の5で定められており、
- 訴因・罰条(刑罰の内容を定めた法律の条文)の明確化
- 訴因・罰条の追加・撤回・変更
- 予定主張(検察官、被告人・弁護人が公判で主張したいこと)を明らかにさせて争点を整理すること
- 検察官、弁護人が、裁判所に対し、公判で提出する証拠の証拠調べを請求すること
- 検察官、弁護人が証拠により立証しようとすることの趣旨の明確化、証人尋問する場合の尋問事項の明確化
- 証拠調べ請求に関する検察官、弁護人の意見の確認(異議があるか、ないか)
- 裁判所が、検察官・弁護人が提出する証拠を採用するかしないかを決定すること
- 証拠調べの順序・方法の決定
- 証拠調べに関する異議の申し立てに対する決定
- 証拠開示に関する裁判所の裁定
- 被害者参加事件における被害者の公判に参加することの申出に対する決定
- 公判期日の指定その他公判手続の進行上必要な事項を定めること
が行われます。
⑩「証拠開示に関する裁定」は、刑訴法316条の25、26に規定があり、「裁判所は、検察官・弁護人が開示をすべき証拠については、被告人又は弁護人の請求により、決定で、その証拠の開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる」というものです。
このほか、刑事訴訟法の一般的な規定に従った手続き(例えば、証拠決定のために事実を取調べること:刑訴法43条3項)を行うこともできます。
公判前整理手続中の被告人への意思確認のための質問
裁判所は、弁護人の陳述や弁護人が提出する書面について、被告人の意思を確かめる必要があるときは、公判前整理手続中に、被告人に対して質問を発し、弁護人に対して被告人と連署した書面の提出を求めることができます(刑訴法316の10)。
公判前整理手続における弁護人の主張や意見は、被告人の意思に沿うものでなければなりません。
そのため、裁判所は、被告人の意思を確認するための質問を行うことができるようになっています。
この場合の質問は、本番の公判で行われる事件の事実関係について、被告人に供述を求める被告人質問(刑訴法311条2項)とは異なります。
次回の記事に続く
次回の記事では、
- 検察官の証明予定事実の提出、証拠調べ請求と証拠の開示
- 証拠の一覧表の交付
を説明します。