前回の記事の続きです。
終局裁判の附随的効力
終局裁判は、
その裁判所における訴訟手続を終結させる裁判
をいい、
が該当します。
有罪の裁判の内容は、
があり、それぞれの刑に執行猶予が付される場合があります。
終局裁判が裁判の確定により成立することによって、以下①、②の付随的な効果が生じます(裁判の確定の説明は前の記事参照)。
① 禁錮刑、懲役刑に処する判決の宣告があった場合
禁錮刑、懲役刑に処する判決の宣告があった場合は、
- 保釈、勾留の執行停止の効力は失われ(刑訴法343条)、新たに保釈又は勾留執行停止の決定がなされない限り、被告人の身柄を刑事施設に収容することになる(刑訴法98条)
- 勾留更新の制限が適用されなくなる(刑訴法60条2項ただし書)
- 権利保釈の規定(刑訴法89条)が適用されなくなる(刑訴法344条)
という終局裁判の附随的効力が生じます。
これは、有罪判決がなされたことによって、「無罪の推定」が覆るためです(最高裁判決 昭和25年5月4日)。
② 無罪、免訴、刑の免除、刑の全部の執行猶予、公訴棄却、罰金、科料の裁判の告知があった場合
無罪、免訴、刑の免除、刑の全部の執行猶予、公訴棄却、罰金、科料の裁判の告知があった場合は、
という終局裁判の附随的効力が生じます。
ただし、上記の場合でも、以下1⃣、2⃣の場合は、被告人は釈放されません。
1⃣ 公訴棄却の裁判が、公訴提起の手続の法令違反(刑訴法338条4項)を理由とするものであるときは、勾留状は失効せず(刑訴法345条)、被告人は釈放されません。
この場合は、検察官において訴訟手続の瑕疵を補正した上で再起訴することが可能であり、その間に被告人が釈放されることになれば、被告人が逃亡する可能性があるためです。
2⃣ 第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴審裁判所が、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があると認めるときは、勾留の理由があり、控訴審における適正迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、被告人を勾留することができます。
この点を判示したのが以下の判例です。
裁判官は、
- 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合であって、刑訴法60条1項各号に定める事由(以下「勾留の理由」という。)があり、かつ、その必要性があるときは、同条により、職権で被告人を勾留することができ、その時期には特段の制約がない
- したがって、第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴審裁判所は、記録等の調査により、右無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、その審理の段階を問わず、被告人を勾留することができる
と判示しました。
次回の記事に続く
次回の記事では、
有罪の裁判
を説明します。