刑事訴訟法(捜査)

勾留とは?④~「勾留期間中の保釈」「勾留の執行停止」「勾留理由の開示」「少年に対する勾留請求と観護措置請求」について判例などで解説~

勾留期間中の保釈は認められない

 保釈とは、

事件を起訴されて裁判中で、かつ、勾留されている被告人について、住居限定や保証金の納付を条件として身柄の拘束を解いて釈放する制度

をいいます。

 ここで、被疑者(起訴される前の犯人)について、保釈が認められるかどうかが問題になります。

 結論として、被疑者については、保釈は認められません。

(被疑者に対しては、保釈の制度自体が適用されません)

 根拠法令は、刑訴法207条1項ただし書きにあり、

『勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。ただし、保釈については、この限りでない

と規定されていることにあります。

勾留の執行停止

 勾留の執行停止とは、

勾留中の被疑者・被告人を一時的に釈放する制度

をいいます(刑訴法95条207条1項)。

 裁判官は、適当と認めるときは、勾留されている被疑者・被告人を親族などに託し,又は住居制限を付して,勾留の執行を停止することができます。

 そして、この勾留の執行停止の制度は、先ほど説明した保釈の制度とは異なり、被疑者段階の勾留にも適用されます(刑訴法207条1項)。

 勾留の執行停止が認められるケースとして、

  • 被疑者の病気治療のための入院
  • 被疑者の親族の冠婚葬祭

が挙げられます。

勾留理由の開示

 被疑者、弁護人、被疑者の親族などの利害関係人は、裁判官に対し、

勾留理由の開示

を請求することができます(刑訴法82条207条1項)。

 勾留理由の開示は、裁判官と被疑者がいる裁判所の法廷で行われます(憲法34条)。

勾留理由の開示は一度きりである

 勾留理由の開示を請求できるのは1回だけです。

 勾留理由を一度開示してもらっているのであれば、再度、勾留理由の開示を求めることはできません。

 この点については、最高裁判例(昭和29年9月7日)があり、裁判官は、

  • 勾留理由開示の請求は、同一勾留については、勾留の開始せられた当該裁判所において1回に限り許されるものと解すべきである

と判示しています。

勾留理由の開示に対しては、準抗告の申立てはできない

 勾留請求や勾留延長請求に対しては準抗告の申立てができました。

 しかし、勾留理由の開示に対しては準抗告の申立てはできません。

 この点については、最高裁判例(平成5年7月19日)があり、裁判官は、

  • 勾留理由の開示は、公開の法廷で裁判官が勾留の理由を告げることであるから、その手続においてされる裁判官の行為は、刑訴法429条1項2号にいう勾留に関する裁判には当たらないと解するのが相当である
  • したがって、本件準抗告の申立ては不適法である

と判示し、勾留理由の開示に対しては準抗告の申立てはできないことを示しました。

少年に対する勾留請求と観護措置請求

 少年(未成年者)に対しては、勾留請求に代えて、観護措置請求をすることができます(少年法43条1項、17条)。

 そもそも、少年(未成年者)に対しては、やむを得ない場合でなければ、勾留請求できません(少年法43条3項)。

 この理由は、少年に対しては、

警察署の留置施設内で拘禁されることになる勾留請求

よりも、

少年の更正施設である少年鑑別所内で拘禁されることになる観護措置請求

の方が、少年保護の観点から好ましいからであると考えられます。

 観護措置請求の手続については、勾留請求の手続が適用されます(刑訴法規則281条)。

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