前回の記事の続きです。
無罪の裁判
終局裁判の種類は、
に分けられます。
刑事訴訟法などの訴訟法上において「裁判」とは、
裁判所又は裁判長・裁判官の意思表示的な訴訟行為
をいいます。
一般的には、刑事事件の公判手続などの訴訟手続の全体を指して「裁判」ということが多いですが、訴訟法上は、訴訟手続の中の、裁判所又は判長・裁判官の意思表示的訴訟行為だけを「裁判」といいます。
この記事では、無罪の裁判について説明します。
無罪の裁判
裁判所は、被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡しをしなければなりません(刑訴法336条)。
「被告事件が罪とならないとき」とは、
検察官が起訴状の公訴事実に記載した訴因の事実が構成要件該当性、違法性、有責性の全部又は一つを欠く場合
をいいます。
※ 犯罪の成立要件が、構成要件該当性、違法性、有責性の3つがそろったときであることの説明は前の記事参照
※ 公訴事実と訴因の説明は前の記事参照
刑訴法336条の「被告事件について犯罪の証明がないとき」とは、
訴因事実の存否について、裁判官が合理的疑いを超える程度の確信(心証)を抱くに至らない場合
をいいます。
有罪か無罪かはっきりしない場合も「犯罪の証明がないとき」に当たり、「疑わしきは被告人の利益に」の原則により、無罪が言い渡されます。
※「疑わしきは被告人の利益に」の原則とは、「刑事裁判において、事実の存否が明確にならないときには被告人にとって有利に扱わなければならないとするルール」をいいます。
無罪判決に対しては、検察官には上訴権があるが、被告人には上訴権はない
無罪判決に対しては、検察官には上訴権がありますが、被告人には上訴権はありません。
無罪判決に対し、被告人が上訴できないのは、被告人には、上訴の利益がないためです。
この点を判示した以下の判例があります。
大審院判決(昭和7年11月21日)
裁判官は、
- 犯罪の証明なしとの理由により無罪を言い渡したる判決に対しては、被告人は上訴権なし
と判示しました。
次回の記事に続く
次回の記事では
管轄違いの裁判
を説明します。