法律(刑法)

住居・建造物侵入罪⑯ ~「住居侵入罪と放火罪、失火罪、公務執行妨害罪、軽犯罪法違反との関係」を判例で解説~

住居侵入罪と放火罪との関係

 住居侵入罪(刑法130条)と放火罪(刑法108条)の関係について説明します。

 住居に侵入し、住居内で放火に及んだ場合、住居侵入罪と放火罪は、通常手段結果の関係があるので、牽連犯の関係に立ちます。

 この点について、以下の判例があります。

大審院判決(明治43年2月28日)

 住居に侵入し、放火しようとしたが、未遂に終わった住居侵入と放火未遂の事案で、裁判官は、

  • 家宅侵入の行為は、本件のごとく、放火の目的をもってなしたる場合といえども、放火の行為とは全く別異の行為にして、その一部をなすものにあらざれば、原審がこれを放火未遂の手段にして刑法第130条に該当するものとなし、刑法54条を適用処分したるは擬律錯誤にあらず

と判示しました

 つまり、一審の裁判所が、住居侵入と放火未遂が牽連犯の関係にあると判示したことに誤りはなく、住居侵入と放火未遂は牽連犯の関係にあると判示したものです。

住居侵入罪と失火罪との関係

 住居侵入罪(刑法130条)と失火罪(刑法116条)の関係について説明します。

 先ほど説明した住居侵入罪と放火罪(放火未遂罪)は牽連犯の関係にありましたが、住居侵入罪と失火罪とは牽連犯ではなく、併合罪の関係にあります。

 この点について、以下の判例があります。

仙台高裁判決(昭和29年9月28日)

 この判例で、裁判官は、

  • 刑法54条1項後段に規定する「犯罪の手段若しくは結果たる行為」とは、抽象的に観察して、ある犯罪の性質上、その手段として普通に用いられるべき行為又はある犯罪より生ずる当然の結果たる関係があることを要する
  • 住居侵入と失火との間にはその性質上、通常用いられるべき手段又は当然生ずる結果たる関係があるとは到底認められない

と判示し、住居侵入罪と失火罪は牽連犯の関係に立たず、併合罪の関係に立つとしました。

住居侵入罪と公務執行妨害罪との関係

 住居侵入罪(刑法130条)と公務執行妨害罪(刑法95条)の関係について説明します。

 住居侵入罪と公務執行妨害罪とは牽連犯ではなく、併合罪の関係にあります。

 この点について、以下の判例があります。

大審院判決(明治43年11月10日)

 住居侵入未遂を行った犯人が、警察官の逮捕を免れるために公務執行妨害に及んだ事案で、裁判官は、

  • 家宅侵入未遂行為につき、巡査の逮捕を免れるためになしたる公務執行妨害の行為は、侵入未遂の所為より生ずべき当然の結果というを得ざるをもって、刑法第54条1項後段の規定に該当せず

と判示し、住居侵入(住居侵入未遂)と公務執行妨害は牽連犯の関係に立たず、併合罪の関係に立つとしました。

住居侵入罪と軽犯罪法違反との関係

 住居侵入罪(刑法130条)と軽犯罪法違反の関係について説明します。

大阪高裁判決(昭和61年9月5日)

 窃盗目的の住居侵入罪と、軽犯罪法1条3号の侵入用器具携帯罪との関係について、裁判官は、

  • 軽犯罪法の立法趣旨、両罪の罪質、保護法益の相異などの諸点を考え合わせてみると、侵入具携帯行為と住居侵入行為とは別個の行為とみるべきである
  • 侵入具を携帯する者が窃盗目的で住居に侵入した場合でも、侵入具携帯罪が窃盗目的の住居侵入罪に包括的に評価され吸収されるものではなく、両罪が別個の犯罪として成立し、併合罪の関係に立つと解するのが相当である

と判示しました。

最高裁判決(昭和57年3月16日)

 軽犯罪法1条23号の窃視(のぞき行為)の罪との関係について、他人の住居の庭先に侵入してその住居内をひそかにのぞき見た事案で、裁判官は、

  • 軽犯罪法1条23号の罪は、住居、浴場等同号所定の場所の内部をのぞき見る行為を処罰の対象とするものであるところ、囲繞地に囲まれ、あるいは建物等の内部にある右のような場所をのぞき見るためには、その手段として囲繞地あるいは建物等への侵入行為を伴うのが通常であるから、住居侵入罪と軽犯罪法1条23号の罪とは、罪質上、通例手段結果の関係にあるものと解するのが相当である
  • 被告人は、正当な理由がなく、被害者方住居内をひそかにのぞき見る目的で、同人方裏庭に侵入し、これを手段として、右居内をひそかにのぞき見たものであるというのであり、右住居侵入罪と軽犯罪法1条23号の罪とは、刑法54条1項後段牽連犯の関係にあるものというべきである

と判示しました。

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