刑法(強盗罪)

強盗罪(36) ~他罪との関係⑨「強盗罪と騒乱罪、盗品等に関する罪、盗犯等の防止及処分に関する法律(常習強盗)との関係」を判例で解説~

 強盗罪(刑法236条)と

  1. 騒乱罪刑法106条
  2. 盗品等に関する罪
  3. 盗犯等の防止及処分に関する法律同法2条、常習強盗)

との関係について説明します。

① 強盗罪と騒乱罪との関係

 強盗罪と騒乱罪刑法106条)との罪数について判示した判例として、以下の判例があります。

大審院判決(大正9年12月7日)

 この判例で、裁判官は、

  • 騒乱罪は、多衆が暴行脅迫を為すをもって態様と為す
  • 而して、暴行脅迫が、強盗又は恐喝の手段として行われたるときは、各行為者は、一面において、その行為に該当する罪名に触れると同時に、他面において、各行為が騒乱の勢を助長するにおいては、騒乱助勢罪(刑法106条2項)を構成するや論なし

として、騒乱罪を犯す中で強盗を行った場合は、強盗罪と騒乱罪が成立し、両罪は観念的競合になるとしました。

② 強盗罪と盗品等に関する罪との関係

 強盗罪と盗品等に関する罪との罪数について判示した判例として、以下の判例があります。

大審院判決(昭和5年9月15日)

 強盗を教唆し、その得た財物を無償で譲り受けた場合について、裁判官は、

と判示しました。

最高裁判決(昭和24年10月1日)

 強盗の幇助犯が、正犯の強奪した財物を盗品であることを知りながら買った場合について、強盗幇助と盗品等有償譲受け罪の両罪が成立し、 併合罪になるとしました。

 裁判官は、

  • 従犯(幇助犯)は、他人の犯罪に加功する意思をもって、有形、無形の方法により、これを幇助し、他人の犯罪を容易ならしむるものであって、自ら、当該犯罪行為、それ自体を実行するものでない点においては、教唆と異るところはないのである
  • しかして、自ら強窃盗を実行するものについては、その窃取した財物に関して、重ねて贓物罪(現行法:盗品等に関する罪)の成立を認めることのできないことは疑のないところである
  • けれども、従犯は、前に述べたごとく、自ら強窃盗の行為を実行するものではないのであるから、本件におけるがごとく、強盗の幇助をした者が、正犯の盗取した財物を、その贓物たるの情を知りながら買受けた場合においては、教唆の場合と同じく、従犯について贓物故買の罪(現行法:盗品等有償譲受け罪)が成立するものと認めなければならない。(昭和24年7月30日最高裁判決参照)

と判示しました。

③ 強盗罪と盗犯等の防止及処分に関する法律(常習強盗)との関係

 盗犯等の防止及処分に関する法律同法2条、常習強盗)は、強盗罪の加重類型です。

 常習として強盗罪を犯したとして、普通の強盗罪をより重く処罰するものなので、盗犯等の防止及処分に関する法律(常習強盗)が成立する場合には、強盗罪は、同法律に吸収されます。

 なので、強盗罪は成立せず、盗犯等の防止及処分に関する法律(常習強盗)のみが成立することになります。

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