刑事訴訟法(公判)

公判前整理手続とは?⑤ ~「検察官による類型証拠の開示」を説明

 前回の記事の続きです。

 前回の記事では、

  • 検察官の証明予定事実の提出、証拠調べ請求と証拠の開示
  • 証拠の一覧表の交付

を説明しました。

 今回の記事では、

  • 検察官による類型証拠の開示

を説明します。

検察官による類型証拠の開示

 事件が公判前整理手続に付されたときは、検察官は以下の①~③のことを行います。

  1. 証明予定事実(検察官が公判において証拠により証明しようとする犯罪事実)を記載した書面を、裁判所に提出し、被告人又は弁護人に送付する(刑訴法316条の13第1項
  2. 裁判所に対し、証明予定事実を証明するために用いる証拠(検察官請求証拠)の取調べを請求する(刑訴法316条の13第2項
  3. 検察官請求証拠(検察官が公判で裁判官に提出する証拠)を被告人又は弁護人に開示して閲覧させる(刑訴法316条の14第1項)。

 さらに、検察官は、

検察官請求証拠(検察官が公判で裁判官に提出する証拠)以外の証拠であっても、刑訴法316条の15第1項1号~9号に該当する証拠(この証拠を「類型証拠」といいます)

で、

一定の要件を満たす場合

は、被告人・弁護人に開示して閲覧させなければなりません。

 類型証拠の開示は、被告人・弁護人において、 検察官請求証拠(検察官が公判で裁判官に提出する証拠)の証明力を適切に判断することができるように行われるものです。

 一定の要件とは、

  1. 類型該当性
  2. 重要性
  3. 開示の相当性(必要性と弊害の勘案)
  4. 被告人又は弁護人の開示請求

の4つです。

 以下で①~④について詳しく説明していきます。

① 類型該当性

 刑訴法316条の15第1項1号~9号は、被告人・弁護人が、検察官請求証拠の証明力を判断できるようにするために開示されることが相当と考えられる証拠の類型(以下の1号~9号)を書き記しています。

 類型証拠として開示の対象となるためには、まず、これらの類型のいずれかに該当することが必要となります。

  • 証拠物(1号)
  • 刑訴法321条2項に規定する裁判所又は裁判官の検証調書(2号)
  • 刑訴法321条3項に規定する書面又はこれに準ずる書面(検察官、警察官作成の検証調書・実況見分調書・写真撮影報告書など)(3号)
  • 刑訴法321条4項に規定する書面又はこれに準ずる書面(鑑定人が作成した鑑定書など)
  • (4号)
  • 検察官の証人予定者等の供述録取等(5号イ・ロ)

※「供述録取書等」とは、刑訴法290条の3に規定があり、「供述書、供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であって供述を記録したもの」と定義されています。

  • 5号に掲げるもののほか、被告人以外の者の供述録取書等であって、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの(6号)
  • 被告人の供述録取書等(7号)
  • 被告人又は共犯者の取調べ状況を記録した書面(被告人又はその共犯として身体を拘束され若しくは公訴を提起された者であって、5号イ若しくはロに掲げるものに係るもの)(8号)
  • 証拠物の押収手続を記録した書面(9号、刑訴法316条の15第2項

② 重要性

 類型証拠の開示の対象となるためには、上記1号~9号の類型のいずれかに該当することに加えて、

特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められること

が必要となります(刑訴法316の15第1項本文)。

 何をもって「重要であると認められる」かは、検察官請求証拠と矛盾している証拠であり得ることが挙げられます。

 検察官請求証拠と矛盾する証拠が存在するのであれば、その証拠は、被告人・弁護人にとって、検察官請求証拠の証明力を否定する証拠になるので、開示を受ける重要性が高いといえます。

③ 開示の相当性(必要性と弊害との勘案)

 類型証拠の開示は、いずれかの類型に該当し、かつ、重要と認められる証拠については、

その重要性の程度、その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの心要性の程度

当該開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度

を比較考量して、開示が相当と認められるときに行われます(刑訴法316の15第1項本文)。

 この場合の弊害の内容は、例えば、罪証隠滅証人威迫、事件関係者への報復、事件関係者の名誉プライバシーの侵害などが挙げられます。

④ 被告人又は弁護人の開示請求

 類型証拠の開示は、被告人又は弁護人からの開示請求により行われます(刑訴法316の15第1項本文)。

 逆に言えば、被告人又は弁護人からの開示請求がなければ、類型証拠の開示は行われません。

 被告人・弁護人は、類型証拠の開示請求を行う際には、刑訴法316の15第3項の事項を明らかにする必要があります。

 具体的には以下のとおりです。

 刑訴法316の15第1項の開示の請求をするときには、

  1. 証拠の類型及び開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項
  2. 被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由(証明力の判断に重要であることなど)

を明らかにしなければなりません。

 刑訴法316の15第2項の開示の請求をするときには、

  1. 開示の請求に係る押収手続記録書面を識別するに足りる事項
  2. 1項の規定による開示をすべき証拠物と特定の検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし、当該証拠物により当該検察官請求証拠の証明力を判断するために当該開示が必要である理由

を明らかにしなければなりません。

類型証拠の開示に際して条件を付すことができる

 類型証拠を開示する場合、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができます(刑訴法316の15第1項本文後段)。

類型証拠を開示しない場合は、理由を説明しなければならない

 検察官は、開示の請求のあった証拠を開示しない場合は、被告人又は弁護人に対し、その理由を告げなければなりません(刑訴法規則217条の26)。

次回の記事に続く

 次回の記事では、

  • 被告人・弁護人の検察官請求証拠に対する証拠意見の表明
  • 被告人・弁護人の証明予定事実の明示
  • 被告人・弁護人の証明予定事実を証明する証拠の調べ請求と検察官への証拠の開示

を説明します。