前回の記事の続きです。
公判手続は、冒頭手続→証拠調べ手続 →弁論手続→判決宣告の順序で行われます(詳しくは前の記事参照)。
前回の記事では、証拠調べ手続のうち、
被告人質問
を説明しました。
今回の記事では、証拠調べ手続の次に行われる
弁論手続
を説明します。
弁論手続
冒頭手続が終わり、証拠調べ手続も終わると、次に弁論手続が行われます。
弁論手続は、
- 検察官が論告を行い、事件に対する事実面・法律面の意見を述べた後、求刑(例えば、「被告人を懲役〇年に処すべきである」などと主張する)を行うこと
- 次に、弁護人が弁論を行い、被告人の立場から見た事件の事実面・法律面の意見を述べる(例えば、「被告人は反省しているので、寛大な処罰にすべきである」など主張する)
- 最後に、被告人が最終陳述を行う(最後に述べたいことを言う)
という一連の手続をいいます。
この弁論手続について、以下ので詳しく説明します。
検察官の論告
証拠調べが終了すると、検察官、被告人又は弁護人の最終意見陳述(検察官の論告、弁護人の弁論、被告人の最終陳述)が行われます。
この最終意見陳述は、証拠調べ後、できる限り速やかに行わなければなりません(刑訴法規則211条の2)。
まず、検察官が、犯罪事実と法律の適用について意見を陳述します(論告)(刑訴法293条1項)。
論告は、
検察官が、公益の代表者としての立場から、事件についての評価を述べるもの
です。
論告は、一般社会に対する公益の代表者としての検察官の意見の表明する場でもあります。
「法律の適用」についての意見は、
- 公訴事実に対し、どのような法条が適用されるべきか
- その法条を適用した結果導き出される刑罰の種類・分量(これを量刑をいいます)
についての意見を述べます。
例えば、公訴事実が万引き(窃盗)の事実であれば、検察官は、「刑法235条を適用し、懲役3年の刑に処すべきである」などと意見を述べます。
弁護人の論告、被告人の最終陳述
検察官の論告が終わった後、被告人と弁護人も意見を述べることができます(刑訴法293条2項)。
被告人、弁護人の意見を「最終陳述」といいます(刑訴法規則211条)。
一般には、弁護人が述べる意見を「弁論」と呼び、被告人が述べる意見を「最終陳述」と呼びます。
弁護人の弁論・被告人の最終陳述は、検察官の論告と異なり、被告人・弁護人の権利であって義務ではないので、弁護人と被告人は、これを行わないこともできます。
弁護人が、裁判所から最終陳述の機会を与えられたにもかかわらず、裁判所の訴訟指揮を不満として最終陳述を行わなかった事案で、弁護人・被告人は最終陳述の権利を放棄したものと認められ、裁判所がこれを聴かないで判決しても違法ではないとした裁判例があります(東京高裁判決 昭和54年5月30日)。
弁護人の弁論・被告人の最終陳述が終わると、審理が終結します。
審理が終結することを「結審」といいます。
結審になると、次は、判決宣告を迎えることになります。
次回の記事に続く
次回の記事では、弁論手続の次に行われる
判決宣告
を説明します。