刑事訴訟法(公判)

公判の流れ㉔~「判決宣告」を説明

 前回の記事の続きです。

 公判手続は、冒頭手続→証拠調べ手続 →弁論手続→判決宣告の順序で行われます(詳しくは前の記事参照)。

 前回の記事では、証拠調べ手続の次に行われる

  • 弁論手続

を説明しました。

 今回の記事では、弁論手続の次に行われる

  • 判決宣告

を説明します。

 「公判の流れ」はシリーズは①~㉔まで行ってきましたが、今回の記事が最後になります。

判決宣告

 冒頭手続が終わり、証拠調べ手続が終わり、弁論手続が終結すると(結審すると)、最後に判決宣告が行われます。

 判決は、公判廷において、宣告により被告人に告知されます(刑訴法342条)。

 判決宣告とは、裁判官が公判廷において、被告人の面前で、「被告人を懲役〇年に処す」などと直接判決内容を言い渡すイメージです。

 判決内容を書いた書面を被告人に交付するのではなく、直接言葉で判決内容を告げることをします。

判決宣告は、必ず公開しなければならない

 判決宣告の場合は、傍聴人が自由に出入りできる公判廷で、必ず公開して行わなければなりません(憲法82条)。

 判決に至るまでの審理(冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続)は、公開しないことができますが、判決宣告は必ず公開しなければなりません。

(審理は政治犯犯罪などの一定の事件を除き非公開にできることについての説明は前の記事参照)

判決宣告は、被告人が出頭しなければ開廷することができない

 判決宣告の公判は、原則として、被告人が出頭しなければ、開廷することができません(判決宣告を行う以前に、公判を開くことすらできないという意味です)。

 ただし、以下の場合には、被告人が不出頭でも開廷することができます。

① 法定刑が50万円以下の罰金又は科料に当たる事件の場合

 法定刑が50万円(ただし、刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、5万円)以下の罰金又は科料に当たる事件の場合は、被告人の出頭は権利ですが、義務ではないので、被告人が出頭しなくても開廷することができます。

 また、この場合、被告人は、自身の代わりに代理人を出頭させることができます(刑訴法284条)。

② 勾留中の被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、刑事施設職員(警察や刑務所の職員)による引致を著しく困難にした場合

 上記①~⑤の場合に該当せず、勾留中の被告人が、公判期日召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、刑事施設職員(警察や刑務所の職員)による引致を著しく困難にした場合は、裁判所は、被告人が出頭しなくても、その期日の公判手続を行うことができます(刑訴法286条の2刑訴法規則187条の2~187条の4)。

 この場合の被告人不出頭で行う公判手続は、全ての公判手続(冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続、判決宣告)を行うことができます(高松高裁判決 平成10年2月10日)。

③ 被告人が心神喪失の状態にあって、無罪・免訴・刑の免除・公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合

 被告人が心神喪失の状態にあって、無罪・免訴・刑の免除・公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合は、被告人の出頭を待たないで、直ちにその裁判をすることができます(刑訴法314条1項ただし書)。

被告人が不在でも判決の宣告ができる場合

 一旦出頭した被告人が裁判長の許可を受けないで退廷したような場合には、被告人が不在でも判決の宣告ができます(刑訴法341条)。

 公判廷に出頭した被告人が陳述をせず、裁判長の許可を受けないで退廷し、又は法廷の秩序維持のため裁判長から退廷を命ぜられた事案で、裁判所は、被告人の陳述を聴かないで判決をすることができるとした以下の判例があります。

最高裁判決(昭和50年9月11日)

 裁判官は、

  • 刑訴法341条が同条所定の事由があるときは被告人の陳述を聴かないで判決をすることができると定めた趣旨は、被告人の正当な防御権の放棄を理由とするものであり、この理は、判決の前提となる審理を行う場合においてもなんら異なるところはないから、いったん公判期日に出頭した被告人が裁判長から法廷の秩序維持のため退廷を命ぜられたときは、裁判所は同条に基き、被告人不在のまま当日の公判審理を行うことができるものと解すべきである

と判示しました。

弁護人が出頭していなくても、被告人が出頭していれば、判決宣告ができる

 弁護人が出頭していなくても、被告人が出頭していれば、判決宣告ができます。

 たとえ、弁護人を必ず被告人に付する必要がある必要的弁護事件であっても、判決宣告においては、弁護人の出頭を要しません。

 これは、判決宣告の場合は、審理の場合と異なり、被告人は弁護人の援助を必要としないためです。

判決宣告の方法

 判決の宣告は、裁判官が、

「主文」(例えば、懲役〇年に処すなど)

  と

「理由」又は「理由の要旨」

を告げる方法で行われます(刑訴法44条刑訴法規則35条2項)。

 「理由」について、

  • 有罪判決の場合は、「罪となるべき事実」、「証拠の標目」、「法令の適用」についての説明
  • 無罪判決の場合は、被告事件が罪とならないこと、犯罪の証明がないことについての説明

を行います(刑訴法335条)。

上訴期間などの告知

 有罪判決宣告の際、裁判官は、被告人に対し、上訴期間と上訴申立書を差し出すべき裁判所の告知をしなければなりません(刑訴法規則220条)。

保護観察付き執行猶予に付した場合

 判決宣告の内容が、保護観察付き執行猶予がだった場合、判決において、被告人に対し、保護観察の趣旨などを説示する必要があります(刑訴法規則220条の2)

裁判官は、被告人に対し、将来についての適当な訓戒を行うことができる

 裁判官は、判決の宣告をした後、被告人に対し、将来についての適当な訓戒を行うことができます(刑訴法規則221条)。

被害者・証人等の特定事項秘匿決定があった場合

 刑訴法290条の2第1項・第3項の被害者特定事項の秘匿決定、刑訴法290条の3第1項の証人等特定事項の秘匿決定があった場合には、被害者特定事項、証人等特定事項(氏名などの個人を特定する事項)を明らかにしない方法で判決の宣告を行う必要があります(刑訴法規則35条3項・3項)。

判決書の作成

 判決宣告が行われたときは、「判決書(はんけつがき)」が作成されます(刑訴法規則218条、218条の2)。

判決宣告の内容と判決書の内容が違っていた場合は、判決宣告の内容が正しい判決内容になる

 判決書と法廷で宣告された判決の内容とが違っていた場合、宣告された判決の内容が優先し、宣告された判決の内容どおりの判決の効力が生じます。

 この点を判示した判例があります。

最高裁判決(昭和51年11月4日)

 裁判官は、

  • 判決は、公判廷において宣告によりこれを告知し(刑訴法342条)、宣告によりその内容に対応し一定の効果が生ずるものと定められている(刑訴法342条ないし346条等)
  • そうして、判決の宣告は、必ずしもあらかじめ判決書を作成したうえこれに基づいて行うべきものとは定められていない(最高裁昭和25年年11月17日判決
  • これらを考えあわせると、判決は、宣告により、宣告された内容どおりのものとして効力を生じる

と判示しました。

裁判官が判決の宣告内容を間違えた場合の言い直しは、判決宣告の手続が完了するまでに行わなければならない

 裁判官が判決の宣告の内容を間違えた場合、判決の宣告の言い直しができるかという問題があります。

 最高裁は、判決宣告のための公判期日が終了するまでの間は、判決宣告の手続は完了しないから、判決書の読み間違いを訂正することもできるし、一旦宣告した判決の内容を変更して改めて宣告することもできるとしています(前記最高裁判決 昭和51年11月4日)。

 逆にいえば、判決宣告のための公判期日が終了した後に、判決の宣告の内容が間違っていることに気付いたとしても、もはや判決の宣告内容の訂正はできないということです。

 判決宣告のための公判期日が終了した後に判決の内容の間違いに気付いた場合、判決の内容の是正方法は、上訴をして、上級の裁判所(高等裁判所又は最高裁判所)に判決の是正を求めるほかに手段はありません。

 このことは、前記最高裁判決(昭和51年11月4日)で判示されています。

 裁判官は、

  • (裁判所の)決定については一定の限度で原裁判所の再度の考案による更正が認められているのに対し(刑訴法423条2項)、判決については、上告裁判所(※最高裁判所)の判決に限り、一定の限度でその内容の訂正が認められているだけであって(刑訴法415条)、第一審及び控訴審の裁判所の判決については、判決の訂正の制度が設けられていない
  • このことは、第一審及び控訴審の裁判所の判決は、その宣告により、もはや当の裁判所によっても内容そのものの変更が許されないものとなることを意味する

と判示しました。

次回の記事に続く

 次回の記事では、

弁論の分離・併合・再開

を説明します。

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