裁判官の除斥、忌避、回避
裁判は公平でなければなりません。
憲法37条1項は、「被告人は、公平な裁判所の裁判を受ける権利を有する」と規定しています。
公平な裁判を実現する一つの手段として、不公平な裁判をするおそれがある裁判官を裁判から除外する制度である
があります(刑訴法20条~26条)。
なお、この制度は、裁判官のみならず、裁判所書記官にも準用される制度です(刑訴法26条 、刑訴法規則15条)。
この記事では、「除斥(じょせき)」について説明します。
除斥とは?
除斥とは、
裁判官が不公平な裁判をするおそれがあると思われる客観的事情を類型的に取りあげ、その類型(除斥原因)に該当する裁判官は、当事者の申立てを待たず、法律止当然に職務の執行から除外される制度
をいいます。
除斥原因は、刑訴法20条に規定されており、
- 裁判官が被害者であるとき
- 裁判官が被告人又は被害者の親族であるとき、又はあったとき
- 裁判官が被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、 保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき
- 裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき
- 裁判官が事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人となったとき
- 裁判官が事件について検察官、司法警察員の職務を行ったとき
- 裁判官が事件について、付審判の決定、略式命令、前審の裁判(例えば、高等裁判所の裁判(二審)からみて、地方裁判所の裁判(一審)は前審の裁判となる)などに関与したとき
の7つになります。
除斥原因に該当する裁判官は、何らの裁判を要せず、当然に職務の執行から排除されます。
もし、除斥原因に該当する裁判官が判決関与したときは、絶対的控訴事由となります(刑訴法377条2項)。
また、除斥原因のある裁判官が構成員となった裁判所の公判調書は違法であり、事実に認定の証拠にすることはできないことが判例(最高裁判決 昭和26年5月25日)で示されています。