刑法(横領罪)

横領罪(55) ~「横領罪にける共犯」「委託物の非占有者が横領罪に加担した場合は、非占有者も横領罪に問われる」「業務上横領罪の犯行に加担した非業務の占有者は、業務上横領罪の共犯で犯罪事実が認定されるが、横領罪の刑罰が科される」を判例で解説~

横領罪にける共犯

 横領罪(刑法252条)における共犯(共同正犯)について説明します。

委託物の非占有者が横領罪に加担した場合は、非占有者も横領罪に問われる

 横領罪は、委託された物の占有者であるという犯人の身分により構成される犯罪です(最高裁判決 昭和27年9月19日)。

 なので、他人の物の占有者ではない非身分者が、横領罪の犯行に加担したときには、刑法65条1項によって、共犯者として処罰されます。

 共犯には、教唆犯幇助犯のほか、 共同正犯を含み、共謀共同正犯も含まれます。

業務上横領罪の犯行に加担した非業務の占有者は、業務上横領罪の共犯で犯罪事実が認定されるが、横領罪の刑罰が科される

 委託物を業務上占有する者と、業務に基づかずに占有する者とが、共犯関係にある場合には、刑法65条1項により、非業務の占有者も刑法253条業務上横領罪の共犯となります。

 ただし、業務上の身分のない占有者は、刑法65条2項によって、刑法252条の単純横領罪の刑で処断されます(最高裁判決 昭和32年11月19日)。

 分かりやすく言うと、裁判官から判決で認定される犯罪事実は業務上横領罪の罪ですが、科させる刑罰の内容は、業務上横領罪の刑罰(10年以下の懲役)ではなく、横領罪の刑罰(5年以下の懲役)が適用されるということです。

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