刑法(横領罪)

横領罪(62) ~他罪との関係④「横領罪と窃盗罪、恐喝罪との関係」を判例で解説~

 前回に引き続き、横領罪(刑法252条)と他罪との関係について説明します。

  今回は、横領罪と

  • 窃盗罪
  • 恐喝罪

との関係について説明します。

窃盗罪との関係

 窃盗犯人が、盗品を使用収益処分するのは、不可罰的事後行為であって横領罪を構成しないのが原則になります。

 たとえば、友人から自転車を窃取し、その自転車を自分のものとして横領しても、横領行為は、不可罰的事後行為になるので、横領罪は成立しません。

 この場合、自転車を窃取したとする窃盗罪のみが成立します。

 しかし、事情によっては、窃盗罪のほか、横領罪も成立する場合があります。

 この点について、以下の判例があります。

名古屋高裁判例(昭和28年8月1日)

 窃盗犯人が、盗品等をいったん他に売却した後、その者から借り受けて、さらに勝手に入質した事案で、横領罪の成立を認めました。

 裁判官は、

  • 被告人が、いったん甲から窃取したものを、乙に売却処分した以上、盗物の処分行為はこれをもって終了したものである
  • 被告人が、更に乙から借り受けた当該物件を、第三者の丙に入質して横領した場合には、新に別領得犯意に基く横領罪の成立するのは当然である

と判示し、窃盗罪のほか、横領罪も成立し、両罪は併合罪になるとしました。

恐喝罪との関係

 恐喝罪(刑法249条)と横領罪の関係について判示した判例として、以下のものがあります。

大審院判決(昭和6年3月18日)

 この判例は、

  • 他人の財物を占有する者を恐喝し、その他人の財物を受領した場合、恐喝された者が、その他人の財物を恐喝した者に交付しようとすれば、不法領得の意思が実現し、恐喝した者が受領しなくとも横領罪が成立する
  • 恐喝した者が、被恐喝者が占有する他人の所有物と知って受領したときは、恐喝罪のほかに盗品等無償譲受け罪が成立するが、横領罪の実行正犯としては責任を問われない

としました。

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