刑法(詐欺罪)

詐欺罪㉖ ~「手形・小切手に関する詐欺(一般線引小切手の使用は詐欺罪が成立しないとした事案、転売目的で金融機関から手形を入手した行為を詐欺罪とした事案)」を判例で解説~

手形・小切手に関する詐欺

 詐欺罪(刑法246条)について、手形小切手に関する詐欺の判例を紹介します。

一般線引小切手の使用は詐欺罪が成立しない事案

東京地裁判決(昭和47年11月7日)

 一般線引小切手拾得した被告人が、支払人たる銀行に対し、正当な所持人のように装って、その支払を請求しても、支払銀行の取引先であることを装わない限り、その銀行を欺くことは通常不能であるから、詐欺罪は成立しないとしました。

 裁判官は、

  • 本件小切手は、小切手法37条38条にいう一般線引小切手であって、一般線引小切手は支払人たる株式会社S銀行N支店において銀行に対し又は『支払人の取引先』に対してのみこれを支払うことを得るもの(同法38条1項)であるから、被告人が『支払人の取引先』であることを装わないかぎり、小切手の換金化は通常不能であって、一般線引小切手の正当権限者たることを装う詐欺手段としては、単に裏書をし、小切手を提出して正当な所持人であることを装うだけでは支払人を欺罔することが定型的に不能であるというべく、刑法246条1項の罪には当らないと解すべきである

と判示しました。

転売目的で金融機関から手形を入手した行為を詐欺罪とした事案

東京高裁判決(昭和49年6月19日)

 金融機関から転売目的で手形小切手を入手した行為について、詐欺罪の成立を認めました。

 被告人が、金融機関に対し、真実は会社の資金や営業実績は全くなく、取得した統一手形・小切手用紙は他に転売して利益を図る意図であるのにこれを秘し、架空会社の代表取締役と偽り、当座勘定の支払資金を継続して預け入れる意思もないのにあるように装って当座勘定取引契約の締結を申し込み、金融機関係員をして、被告人の会社は実在の会社で、会社名義の当座預金勘定への入金も継続して行われ、交付する統一手形・小切手用紙も同会社の営業活動等正当な用途に使用されるものと誤信させ、契約を締結させて統ー手形・小切手用紙を交付させたときは、その交付は人を欺く行為の結果であるとして、詐欺罪の成立を認めました。

 裁判官は、

  • 被告人は、金融機関が取引のブローカーらの需要が大きく、これを他に転売すれば、多額の利益が得られることに着目し、登記簿上存在するだけで全然実体がないく、事務所や営業実態等も全くない架空の会社の名義で市中の金融機関との間に当座勘定取引を開始することにより、金融機関から統一手形用紙及び統一小切手用紙を騙取しようと企てた
  • 被告人は、金融機関と当座勘定取引契約を締結して、一手形・小切手用紙を入手するために、金融機関の係員を欺罔し、その欺罔行為の結果、係員を誤信させて、当座勘定取引契約を締結させ、その契約に基づいて被告人自身に対し、統一手形・小切手用紙を交付させたものであるから、右手形・小切手用紙の交付は、被告人の欺罔行為の結果であるといわねばならない

と判示し、詐欺罪が成立するとしました。

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