刑事訴訟法(捜査)

内偵捜査とは? ~「内偵捜査の目的」「GPS捜査とその違法性」を刑事訴訟法と判例で解説~

内偵捜査とは?

 内偵捜査とは、

捜査機関が、犯人や犯罪事実を特定するための資料を得るために行う内偵の手段

をいいます。

 内偵の方法として

があります。

 内偵捜査の目的として、犯人の特定と検挙があります。

 たとえば、捜査機関が、犯罪被害者が話す犯人の特徴や車のナンバーの目撃状況などから、犯人のめぼしをつけ、めぼしをつけた犯人の尾行・張込・監視を行い、

「犯人に間違いない」

と判断したところで、犯人を検挙するというのが内偵捜査の果たす役割です。

 また、内偵捜査は、裁判官の発する令状に基づいて行う強制捜査ではなく、任意捜査です。

 なので、犯人や関係者の名誉を害しないように注意して行わなければなりません(刑訴法196条)。

GPS捜査

 内偵捜査の手法のひとつにGPS捜査があります。

 GPS捜査とは、

犯人が使用する持ち物などにGPS発信機を取りつけて、位置情報を取得し、犯人の所在を割り出す捜査手法

です。

 このGPS捜査ですが、近年、裁判官の発する令状なしに行うことは、違法であると裁判所に判断されています。

 GPS捜査を行うには、裁判官の発する令状が必要であり、任意捜査では行えないということです。

 最高裁判例(平成29年3月15日)において、裁判官は、

  • GPS捜査は,対象車両の時々刻々の位置情報を検索し,把握すべく行われるものである
  • その性質上,公道上のもののみならず,個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて,対象車両及びその使用者の所在と移動状況を逐一把握することを可能にする
  • このような捜査手法は,個人の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うから,個人のプライバシーを侵害し得るものである
  • そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に秘かに装着することによって行う点において,公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり,公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである
  • 憲法35条は,「住居,書類及び所持品について,侵入,捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ,この規定の保障対象には,「住居,書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である
  • そうすると,前記のとおり,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる(最高裁昭和50年(あ)第146号同51年3月16日第三小法廷決定・刑集30巻2号187頁参照)とともに,一般的には,現行犯人逮捕等の令状を要しないものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから,令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである

と判示しました。

 判例を要約すると、

  • GPS捜査は、個人のプライバシーを侵害するため、任意捜査ではできない
  • 裁判官からの令状の発布を受け、強制捜査で行う必要がある

ということです。

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