占有の主体 (法人は占有の主体になれない)
占有とは、
人が財物を事実上支配し、管理する状態
をいいます。
そして、占有の主体は、
に限られます。
つまり、占有の主体は人だけがなることができ、
法人は占有の主体にはなれない
ということです。
占有は、現実的な観念です。
なので、物の事実上の支配をなしうるのは、自らの意思を持ち、行動できる自然人に限られるのです。
法人は、国家が法律上の目的のために、人為的に作り出した観念です。
ゆえに、法人は、物の事実上の支配をなしえないことから、占有の主体となることはできないのです。
そこで、法人の所有物は、
法人の代表者(代表取締役など)が、法人のために占有している
という考え方が採用されます。
たとえば、A社が所有するパソコンが盗まれたという窃盗事件が起こった場合、犯罪事実は、
「A社の所有するパソコンが窃取された」
ではなく、
「A社の代表取締役〇〇さんが管理するパソコンが窃取された」
となります。
占有の主体は、自然人であれば誰でもなれる
占有の主体は、自然人であれば、誰でもなれます。
「誰でもなれる」という意味は、
という意味です。
なので、
- 幼児
- 精神病者
- 酩酊による心神喪失者
でも占有の主体になれます。
死者は占有の主体になれない
自然人は、死亡と同時に占有の主体ではなくなります。
死者の占有という観念を認め、死者も占有の主体になりえるとする説もあります。
しかし、基本的には、死者は、自分の意思を持つことも、行動することもできず、財物を事実上支配することは不可能であることから、占有の主体にはなりえないとされます。
占有の機能(奪取罪と横領罪を区別する)
占有という概念があるおかげで、
奪取罪と横領罪のどちらの犯罪が成立するかを区別できる
ようになります。
奪取罪は、
他人が占有する物を侵害する
(他人が持っているものを奪う)
ときに成立する犯罪です。
たとえば、
が奪取罪です。
横領罪は、
自己が占有する他人の物を侵害する
(他人から預かっているものを奪う)
ときに成立する犯罪です。
ちなみに、占有離脱物横領罪(落とし物を拾って自分のものにする)も横領罪にカテゴリー化されますが、占有離脱物横領罪は、
他人の占有を離れた物を侵害する
ときに成立します。
占有離脱物横領罪では、他人の占有からの離脱が問われるにとどまり、自己占有の有無は問題にはされません。
このように、
物の占有がどこにあるか
で同じ物をとる行為でも、成立する犯罪が違ってきます。
占有という概念があるおかげで、
奪取罪と横領罪のどちらの犯罪が成立するかを区別できる
ようになるのです。
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